リチウムイオン電池はどうやって作られるのか?

電池には、その製造に使われた材料の善し悪しがそのまま現れます。そのため、電池の製造に使用される原材料の品質や混合材料の均一性および組成が化学分析によって確保されています。

電池材料の製造時には、真空およびリーク検出手法を用いた生産プロセス試験により、コーティング、積層、および乾燥状態が総合的に管理されます。

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リチウムイオン電池 – 4 つの主な構成要素

リチウムイオン電池(LIB)は、カソード、アノード、電解液、およびセパレータの 4 つの主要材料で構成され、どの材料も電池の性能と寿命を左右します。初期故障を防ぎ、安全性を確保するには、これらの材料を正しく配合し、製造する必要があります。

各材料には、以下のような分析試験が実施されます。

  • 原料の同定の確認と純度の試験
  • 製造を効率化し、最終生成物の品質不良を低減するための、材料処理時の不純物のモニタリング
  • 組み立て前の最終材料の品質管理


電池材料試験をアジレントはどのようにサポートできるのか?

分析試験からプロセス管理まで、アジレントはお客様が最高の電池を製造するために必要とする機器、真空ポンプ/リーク検出、技術力を提供します。




電池材料試験に関するよくある質問

一般的な電池は複数のセルで構成され、各セルではそれぞれアノード、カソード、電解液スラリー、およびセパレータが密閉ハウジング内に収められています。通常、アノードはグラファイト化合物、カソードはリチウム金属酸化物でできています。電解液は有機溶媒、リチウム塩、およびさまざまな性能向上添加剤から成るゲルまたは液体であり、リチウムイオンの導電経路になります。セパレータはポリマーの薄膜で、アノードとカソードを電気的に絶縁する一方、イオンの通過を許容します。充電/放電サイクルでは、イオンはセパレータを通ってアノード側またはカソード側に移動し、それによってエネルギーを電位差として供給したり蓄えたりします。
リチウムイオン電池に使用される材料を適切に特性解析しないと、収量の低下、電池の早期故障、多くのコストを伴う遅延、製造の中断を招き、徹底的な原因究明が必要になる可能性もあります。高品質の製品を安定して供給できなければ、評判やビジネスの損失につながります。
リチウムイオン電池のバリューチェーンを担うサプライヤの間では、原子分光分析、分子分光分析、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、イオンクロマトグラフィー、質量分析、多様な表面科学および材料特性解析手法が使用されています。
分析試験は材料の製造段階全般にわたって実施されます。一般には、試験として、原材料/原料の純度試験、混合物および配合物の特性解析と純度試験、最終生成物の試験などが行われます。製造および品質に関連するトラブルシューティングにも分析試験が使用されます。
  • 基材の混合:電極の製造時には、真空条件が基材の混合段階を促進し、活物質、結合剤、導電材の均一な混合を助けます。また、気泡を排除し、材料の純度を高めることで、電極の電気性能を向上させます。
  • 真空乾燥:真空乾燥時には、真空ポンプによって水分を効果的に除去することにより、電極の構造的完全性と品質を維持できます。
  • コーティング段階:コーティング段階では、集電体に活物質を精密に成膜するうえで、真空がきわめて重要な役割を果たします。最適な電気化学性能を達成するためには、この精密さが不可欠です。
リチウム塩の分析と処理には、数多くの困難があります。塩には、吸湿性、毒性、または可燃性のものや分解しやすいもの、安全上の危険をもたらすものがあります。例えば、LiPF6 は水と反応して、毒性の高いフッ化水素(HF)ガスを放出します。そのため、リチウム塩材料の同定は、グローブボックスなど、湿度が管理された環境で行うことをおすすめします。
LiPF6 塩は反応性が高く、LiF と PF5 に分解する可能性があります。PF5 は水分にさらされると水と反応し、毒性と腐食性の高い POF3 ガスとフッ化水素(HF)ガスを生成します。こういった特性は重大な安全上の危険を引き起こすだけでなく、電池の劣化を早め、故障につながる可能性もあります。FTIR では、幅広い材料や物質の非破壊での化学的フィンガープリンティングをすばやく行えます。製造環境向けに設計された堅牢な FTIR によりシンプルな QA/QC ワークフローを実施することで、使用前の電池グレードの LiPF6 の品質を確保できます。
液体電解質中の溶媒と添加物の組成、比率、純度は、リチウムイオン電池の容量、サイクル寿命、安定性、安全性において重要な役割を担っています。リチウムイオンセルでは、ジメチルカーボネート(DMC)やエチルメチルカーボネート(EMC)など、炭酸エステルを主成分とする炭酸ベースの電解液が広く使用されています。ところが、これらの溶媒が低電位で分解され、セル性能の低下につながるという予測が報告されています。この問題に対処するため、リチウムイオン電池の性能を効果的に高めることを目指して、フルオロエチレンカーボネート(FEC)やビニレンカーボネート(VC)などの添加剤が調査され、電解液で使用されています。こういった溶媒、添加剤、その分解生成物を正確に測定することが、リチウムイオン電池の電解液を設計するうえで、また性能向上に向けた研究において不可欠です。組成、不純物、および分解生成物の分析には、GC、LC、GC/MS、LC/MS などのクロマトグラフィー法が使用されています。
リチウムイオン電池の電解液や溶媒の汚染または分解の目安となる変色を検出する手段として、UV-Vis 分光光度計による色測定が使用されています。この品質管理アプローチを実装することで、高品質の電解液と溶媒のみをリチウムイオン電池の生産に使用し、その安全性、効率、耐久性を高めることができます。
ガスの発生(ガッシングとも呼ばれる)または電池の体積膨張はよく起こる現象であり、リチウムイオン電池の性能を低下させたり、電解液の分解による電池の故障につながる可能性があります。膨張ガスの主な成分は、永久ガスと軽質炭化水素です。膨張ガスの分析には、シンプルな操作で化合物を確実に同定できるガスクロマトグラフィーが広く使用されています。
この部品は、電極が直接接触するのを防ぎ、短絡や熱暴走が発生する可能性をなくすという点において、電池の安全性と性能に関してきわめて重要な役割を果たしています。また、充電および放電プロセスにおける電極間のイオンの流れも促進します。セパレータはポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)などのポリマー製が一般的です。これらのポリマーの分析には、材料固有の FTIR スペクトルにもとづいて材料を識別できるフーリエ変換赤外(FTIR)分光分析が非常に有効です。ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用すれば、ポリマー製セパレータの分子量分布を測定できます。

カソードの試験

LIB カソードはリチウムイオンの放出源として機能し、電池の容量と電圧を決定します。前駆体カソード活物質の試験とプロセス管理を適切に行うことで、エネルギー密度、安全性、寿命を最大化できます。

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アノードの試験

電池が充電/放電サイクルによって電流を供給するときに、アノードではリチウムイオンの蓄積と放出が行われます。正確なプロセス管理と化学試験により、適正な生産と長い電池寿命を確保することができます。

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電解液の試験

電解液は、電池内でのイオンと電子の移動を促進し、システムに電流が流れるようにします。電解液の適切な配合と組成は、電池の適切な動作と寿命を確保するうえきわめて重要になります。

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セパレータの試験

セパレータは、カソードとアノードの接触を防ぐ一方、電池内でのイオンおよび電子の流れを許容します。適切な組成と生産により、電池の安全性と有効性が高まります。

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