フライトチューブは容量が大きく、これに水素を充填するのは安全ではありません。
キャリアガスとして窒素を使用したり水素を評価したりする場合は、銅チューブを使用できます。ただし水素に切り替える前に、新しいチューブを使用することをお勧めします。水素は非常に高効率なスクラバであるため、(チューブを含む)流路の汚染物質を拾ってしまうからです。この結果、干渉やバックグラウンドノイズが発生する場合があります。また不活性 GC コンポーネントを使用して、システムを一晩コンディショニングする必要があります。
銅チューブは、水素をキャリアガスとして長期間使用するともろくなる可能性があります。このため長期間使用する場合は、破損を防ぐため、クロマトグラフィーに適した品質のステンレスチューブおよびフィッティングを使用することを推奨します。
Agilent GC/MS システムでは、すべてのエクストラクタ、不活性のステンレス製 EI イオン源に、3 mm ドローアウトレンズ(不活性のステンレス製イオン源)または 3 mm エクストラクタレンズ(エクストラクタイオン源)が標準で付属しています。直径 3 mm というサイズはヘリウムキャリアガスに適していますが、水素に使用すると問題が発生する可能性があります。イオン源内の反応を引き起こす最も活性度の高い領域は、レンズの開口部周辺の金属です(ただし、他にも活性度が高い領域はあります)。このため、開口部の直径を 9 mm に広げれば、問題は大幅に減少します。このため、アジレントは 6 mm と 9 mm のレンズを提供しています。9 mm レンズは、水素キャリアガスを使用するほとんどのアプリケーションに推奨しています。直線性、感度、ピーク形状、イオン源での反応のバランスがよく、全体的な性能が非常に高いためです。6 mm レンズは、高感度が必要な場合に適していますが、まずは 9 mm レンズを使用することをお勧めします。6 mm レンズでは活性度が少し高くなるためです。
5977A/B/C GC/MSD や Agilent 7000C/D/E トリプル四重極 GC/MS の 9 mm レンズでは、Agilent HydroInert イオン源の使用を推奨します。Agilent HydroInert イオン源には、6 mm と 3 mm のいずれのエクストラクタレンズも使用できます。これらのレンズを使用すると成分の S/N 比が向上しますが、化合物によっては反応性が上がる可能性があります。
GC/MS システムでは、できれば定流量メソッドを使用してください。定圧メソッドとオーブン温度プログラムを組み合わせて使用すると、イオン源への流量が変化するため、MS 性能に悪影響が出る可能性があります。また、MS ハードウェアの水素用のポンプ能力を決定してください。拡散ポンプシステムでは 0.5~0.7 mL/min、ターボポンプシステムでは 0.5~2 mL/min の流量を使用してみてください。
GC/MS メソッドを初めて水素キャリアガスに切り替えると、重大なピークテーリングが発生する場合があります。この問題を回避するには、イオン源を一晩コンディショニングする必要があります。詳細手順については、『Agilent EI GC/MS 機器でのヘリウムから水素へのキャリアガス切り替えユーザーガイド』の 30 ページを参照してください。
超高純度の水素を供給する場合にかぎり、いずれも使用できます。
多くの場合、最初はシリンダの方が低コストで済みます。水素をキャリアガスとして評価するのが初めてで、ルーチン分析用に導入するかどうかが未定の場合は、シリンダのほうが簡単かもしれません。純度仕様が 99.9999 % 以上で、酸素と水分の濃度が低い水素を使用してください。また、高純度水素アプリケーション用に設計されたシリンダレギュレータを使用してください。適切なレギュレータの選択については、ガス供給業者にお問い合わせください。
水素キャリアガスの供給には、水素ジェネレータも使用できます。水素ジェネレータは通常、シリンダより初期コストは高いですが、長期的にはより経済的である可能性があります。純度仕様が 99.9999 % 以上で、酸素と水分の濃度が低い水素のみを検討してください。水素ジェネレータを選択するときは、クロマトグラフィーメソッド、および水素ジェネレータの供給先となる同時稼働するすべての機器のニーズに、最大供給圧力と流量が適合していることを確認します。水素ジェネレータには、次のような便利な安全機能があります。
タンクと GC の背面の間のガス供給にリークがある場合は、圧力損失試験によって特定できます。まずは、ラインを加圧してみます。次に GC をオフにすると、機器の背面のすべてのプロポーショナルバルブが閉じます(旧式の GC では、ガスラインのアイソレーションバルブを使用できます)。レギュレータの圧力を 60 psi に設定し、レギュレータの圧力調整バルブを完全に閉めて、10 分間待ちます。レギュレータの圧力が 1 psi でも低下すれば、リークが発生しています。この値が 1 psi 以上の場合は、重大なリークが発生しています。アジレントの最新のインテリジェント GC には自動診断機能があり、GC 内のリークをユーザーが操作することで、または注入ごとにチェックできます。
リークが見つかったら、次にリークの発生場所を特定します。
おそらく、GC のほうが GC/MS より必要性が低いでしょう。水素はヘリウムより粘性が低いため、同じ流量を得るために必要な注入口圧力が大幅に低くなります。適切な注入口圧力(5 psi 以上)を維持するためのカラム寸法と流量の設定値を選択し、カラム流量とリテンションタイムを正確に制御できるようにする必要があります。室温以下の注入口圧力は絶対に避けてください。注入口のフローがシャットダウンされ、システム内に空気が流入して注入口ライナやカラムが損傷する可能性があるためです。
注入口圧力が低い場合には、いくつかの対処方法があります。1 つは同じ内径の長いカラムを使用することです。この場合、分離能と容量は向上しますが、分析時間が長くなります。また、小さい内径の短いカラムを使用するという方法もあります。この場合はカラム容量が少ないため注入量を減らす必要がありますが、分離能が向上し、分析時間を短縮できる可能性があります。
メソッドトランスレータソフトウェアと圧力/流量カリキュレータは、大気圧条件(GC 検出器)や真空(質量分析計)でヘリウムから代替キャリアガスに切り替える場合に、適切なカラム寸法と動作条件を選択するのに便利です。