ヘリウム不足の問題に
対応

代替キャリアガスへの切り替え

Two lab technicians working next to two helium tanks

代替キャリアガスへの切り替え

ヘリウム不足による混乱を避けるために、分析に代替キャリアガスを使用することを検討してください。GC/MS を使用していたり、メソッドで分離能が重要であったりする場合は、水素の使用をお勧めします。GC を実行していて、メソッドの分離能が十分すぎる場合は、窒素を試してみてください。

Two lab technicians working in a lab

システムと代替キャリアガスの互換性を確認する

この表では、ご使用の機器構成と水素または窒素キャリアガスとの互換性を確認できます。(サンプル導入デバイスを含む)システムのすべてのコンポーネントで、アプリケーション用に検討対象となり得る代替キャリアガスを使用できる必要があります。

システムの互換性

技術製品水素キャリアガス窒素キャリアガス
GC 8890 GC 可(すべての注入口) 可(すべての注入口)
Intuvo 9000 GC 可(すべての注入口) 可(すべての注入口)
8860 GC 可(すべての注入口) 可(すべての注入口)
990 マイクロ GC GL サイエンスにお問い合わせください
490 マイクロ GC GL サイエンスにお問い合わせください
7890 シリーズ GC 可(すべての注入口) 可(すべての注入口)
7820 シリーズ GC 可(すべての注入口) 可(すべての注入口)
6890 シリーズ GC 可(すべての注入口) 可(すべての注入口)
6850 GC 可(すべての注入口) 可(すべての注入口)
GC 検出器 FID 可(キャピラリカラム) 可(キャピラリおよびパックドカラム)
TCD 可(キャピラリおよびパックドカラム) 可(キャピラリおよびパックドカラム)*
ECD 可(キャピラリカラム) 可(キャピラリおよびパックドカラム)
NPD 可(キャピラリおよびパックドカラム) 可(リン検出、キャピラリ、
およびパックドカラム) 不可(窒素検出)
FPD 可(キャピラリおよびパックドカラム) 可(キャピラリおよびパックドカラム)
SCD 可(キャピラリおよびパックドカラム) 可(キャピラリおよびパックドカラム)
NCD 可(キャピラリおよびパックドカラム) 不可
GC/MS 5977 シリーズシングル四重極 非推奨
7000 シリーズトリプル四重極 非推奨
7010 シリーズトリプル四重極 非推奨
7250 Q-TOF 不可 非推奨
7200 シリーズ Q-TOF 不可 非推奨
5975 シリーズシングル四重極 非推奨
5973 シリーズシングル四重極 非推奨
サンプル導入
ヘッドスペース 8697 シリーズ
7697A シリーズ
G1888 不可
7694 不可
熱脱着 TD-xr 可(マルチガスバージョン) 可(全バージョン)
パージアンドトラップ Lumin 可(パージに不活性ガスの使用が必要)
AQUATek 可(パージに不活性ガスの使用が必要)
Atomx 可(パージに不活性ガスの使用が必要)

キャリアガスオプションの比較

GC または GC/MS メソッドのキャリアガスを選択するときは、すべてのオプションを慎重に検討する必要があります。

各キャリアガスのメリットとデメリット

メリットデメリット
ヘリウムキャリアガス 利用可能な場合は常に第 1 の選択肢 不足や供給の中断が起こりやすい
優れたクロマトグラフィーおよび MS 性能 コストが不安定であるか高い
ライブラリ内の参照スペクトルはすべて、ヘリウムを使用して取得されている クロマトグラフィーグレードのものを見つけるのが難しい場合がある
水素キャリアガス ヘリウムの最適な代替ガス 安全確保に注意が必要
ヘリウムよりクロマトグラフィー分離能が高く、高速 反応性に注意が必要
窒素キャリアガス 安価である 分離能の達成に、より長い分析時間が必要
クロマトグラフィーグレードのものが広く入手可能 MSD での使用は非推奨
水素より安全

代替キャリアガスのメソッド変換

アジレントのメソッドトランスレータソフトウェアを使用して、キャリアガスをヘリウムから水素または窒素に切り替えることができます。このツールは、既存のヘリウムメソッドパラメータを用いて、キャリアガスを水素または窒素に切り替えた場合の新しい圧力、流量、速度、および昇温速度を自動的に提案し、実質的に同一の相対溶出順序を保証します。

メソッドトランスレータは、OpenLab CDS ソフトウェアに内蔵されています。または、スタンドアロンアプリケーションとしてダウンロードすることもできます。

ヘリウムから水素への切り替え

ヘリウムから水素へのキャリアガスの切り替え

一般的に、最適化の必要性が少ないメソッドで取り扱うのは次のような分析対象物です。

  • 「耐久性のある」化合物
  • 濃度が高いもの
  • スプリット注入で分析されるもの
  • 誘導体化されたもの

ヘリウムから水素キャリアガスに切り替えるときは、バリデーションや、必要な SOP の更新のための時間を確保してください。

ASTM D5769:ガソリン中の芳香族化合物の GC/MS 分析

水素をキャリアガスとして使用する場合の考慮事項:

  1. MS ポンプ能力では流量に制限があるため、ターボポンプの使用を推奨します。
  2. ピーク溶出順序とカラムサンプル容量はわずかに変化する場合があります。
  3. 水素は分析対象物およびサンプル流路と相互作用する可能性があるため、不活性カラムおよび流路の使用をお勧めします。注入口温度を低くすると、水素がシステムと反応する可能性を低減することができます。
  4. 塩化メチレンや二硫化炭素などの特定の溶媒は避ける必要があります。

Agilent EI GC/MS システムにおけるヘリウムから水素キャリアガスへの切り替えの詳細手順については、ユーザーガイドをダウンロード してください。このガイドには、切り替えを検討している GC ユーザー向けのヒントも含まれています。

GC/MS および GC/MS/MS 用の HydroInert イオン源

半揮発性有機化合物、農薬などの活性化合物の GC/MS 分析で、水素キャリアガスではうまく測定ができないケースがあります。Agilent HydroInert イオン源 を使用すれば、水素を用いてクロマトグラフィー効率を上げられるため、次のようなメリットがあります。

  • 水素キャリアガスへの投資対効果が大幅に向上
  • 分離に必要な時間を短縮
  • 感度の低下やスペクトルの異常を低減
  • システムメンテナンスやイオン源クリーニングに起因するダウンタイムを最小化

HydroInert イオン源の可能性の詳細については、こちらの技術概要をご覧ください。

水素キャリアガス用の内蔵の安全機能

水素リークが発生すると、Agilent GC および GC/MS システムは一連のアクションを実行します。例えば、排気フラップの開放、水素ガス供給の停止、温度ゾーンのシャットダウン、フロントパネルへの安全停止メッセージの表示(および警告音)などです。

8890 および 8860(G6598A)または 7890B(G6597A)GC システム用オプションの水素センサモジュールシリーズ 2 は、流路のリークに起因する可能性のある水素をチェックします。このセンサモジュールは、GC カラムオーブン内の水素レベルをモニタリングし、水素レベルが 1 % に達する前に、すべての水素ガスフローのシャットダウンをトリガーします。この数値は、リスクが発生しうる上限値を大幅に下回るものです。

またシリーズ 2 の高度な設計により、次のようなメリットがあります。

  • 信号ドリフトが大幅に減少し、キャリブレーションが必要なのは設置時と半年に 1 回のみです。
  • 連続使用中は、インテリジェントな内部診断機能がセンサのステータスをモニタリングします。
  • ポンプを使用せずに、オーブン内の気体サンプルを吸引してセンサに流すことができます。つまり、障害が発生してシステムのダウンタイムの原因となりうる機械的なデバイスを使用する必要がありません。
  • アプリケーションに適した注入口を、引き続き使用できます。センサは GC メインフレームに設置され、1 つの注入ポートには統合されません。

水素キャリアガスの使用の詳細については、『Agilent GC/MS 水素使用時の注意事項』と、 Intuvo 9000, 8890 および 8860 GC システムの技術概要を参照してください。

ヘリウムから窒素への切り替え

ヘリウムから窒素へのキャリアガスの切り替え

窒素は GC キャリアガスとして適さない場合があります。窒素はヘリウムや水素よりピークがシャープになりますが、直線速度が上がるとピークがすぐに広がります。このため、同じ直線速度で窒素キャリアガスを使用すると、クロマトグラフィー分離能が低下する可能性があります。

メソッドの分離能がヘリウムでは十分すぎる場合は、窒素キャリアガスを使用できる場合があります。窒素では、ヘリウムのような供給やコストの問題がなく、優れた分離能を実現できます。また、水素のような安全上の問題もありません。窒素への切り替えを希望していて、いくつかの重要なピークを十分に分離する必要がある場合は、低い直線速度を使用して、分離能を維持または向上させることができます。ただし、このプロセスでは分析時間が長くなります。

このため、窒素を代替キャリアガスとして使用することをあきらめる前に、使用するメソッドで分離能の低下をある程度解消できないか、または分析時間の若干の延長を許容できないかを検討してください。

バイオディーゼル中の FAME 含有量の EN14103 による GC 分析

注意事項:窒素キャリアガスは、電子イオン化 GC/MS には推奨されません。ヘリウムと比べて感度やライブラリ一致率が低いためです。

代替キャリアガスのアプリケーション

水素および窒素キャリアガスのアプリケーションノート

アジレントは、水素や窒素をキャリアガスとして使用する、GC や GC/MS のアプリケーションノートを多数公開しています。対象分野は、エネルギーと化学、環境、食品、製薬など多岐にわたります。

水素キャリアガスのアプリケーション

業界タイトル
エネルギーと化学 Agilent 8890 GC とキャピラリカラムによる ASTM D3606 準拠のガソリン中のベンゼンとトルエンの測定
Robust, Sensitive, and Reliable ACCUTRACE (TM) Plus Fuel Marker Analysis by Two-Dimensional GC/MS Using Hydrogen as the Carrier Gas(キャリアガスとして水素を使用した 2 次元 GC/MS による堅牢性、精度、および信頼性に優れた ACCUTRACE (TM) Plus Fuel Marker 分析)
環境 Fast Analysis of 18 Polychlorinated Biphenyls (PCBs) Using the Agilent Intuvo 9000 GC Dual ECD(Agilent Intuvo 9000 GC デュアル ECD による 18 種類のポリ塩化ビフェニル(PCB)の高速分析)
水素キャリアガスと HydroInert イオン源を用いたヘッドスペース GC/MSD による飲料水中の揮発性有機化合物の分析
水素キャリアガスと HydroInert イオン源を用いたガスクロマトグラフィー/トリプル四重極質量分析計(GC/MS/MS)による半揮発性有機化合物の分析
水素キャリアガスと Agilent HydroInert イオン源を用いた GC/MS による半揮発性有機化合物の分析
水素キャリアガスと Agilent HydroInert イオン源を用いた EPA TO-15 分析
水素キャリアガスを用いた PAH の GC/MS/MS 分析
水素キャリアガスおよび Agilent HydroInert イオン源を用いた GC/MS による PAH の分析
Optimized PAH Analysis Using Triple Quadrupole GC/MS with Hydrogen Carrier(トリプル四重極 GC/MS と水素キャリアを用いて最適化した PAH 分析)
食品 Agilent 8890 GC システムによる蒸留酒の分析
乳児用調製粉乳中の多環芳香族炭化水素の抽出と分析
Optimized PAH Analysis Using Triple Quadrupole GC/MS with Hydrogen Carrier(トリプル四重極 GC/MS と水素キャリアを用いて最適化した PAH 分析)
水素キャリアガスと Agilent HydroInert イオン源を用いた GC/MS による香料と香気成分の分析
水素キャリアガスを用いた GC/MS/MS による色素のある食物中の農薬分析
その他 GC-FID による香料サンプルの品質管理:Agilent 7890 GC から Agilent Intuvo 9000 GC へのメソッド移管
Identification of Metabolites in Porcine Serum with Hydrogen Carrier Gas(水素キャリアガスによる豚の血漿中の代謝物の同定)
Analysis of Terpenes in Cannabis with Hydrogen Carrier Gas and the Agilent HydroInert Source on the Agilent 8890/5977CGC/MS(Agilent 8890/5977CGC/MS での、水素キャリアガスと Agilent HydroInert イオン源を用いた大麻中のテルペンの分析)

窒素キャリアガスのアプリケーション

業界タイトル
エネルギーと化学 8860 GC システムおよびオンボードデータ処理を用いた単環式芳香族溶媒の分析メソッド
環境 Analysis of 27 Halogenated Hydrocarbons and 11 Volatile Organic Compounds in Drinking Water(飲料水に含まれる 27 種類のハロゲン化炭化水素と 11 種類の揮発性有機化合物の分析)
Agilent 8860 GC と 7697A ヘッドスペースサンプラによる飲料水の分析
Determination of Halogenated Hydrocarbons, Benzene, and Derivatives in Drinking Water with the Agilent 8697 Headspace Sampler and Agilent 8890 GC System(Agilent 8697 ヘッドスペースサンプラと 8890 GC システムを用いた飲料水中のハロゲン化炭化水素、ベンゼン、およびその誘導体の測定)
Haloacetic Acid Analysis by the Agilent Intuvo 9000 Dual ECD System(Agilent Intuvo 9000 デュアル ECD システムによるハロ酢酸の分析)
食品 Agilent 8890 GC と 4 つの検出器による果実および野菜中の有機リン系および有機塩素系農薬の分析
Agilent 8860 ガスクロマトグラフによる 37 成分の FAME の高速分析
Agilent 8890 GC による脂肪酸メチルエステル(FAME)の分析と実際のサンプルへの適用
法医学 血中アルコール分析においてデュアル水素炎イオン化検出器構成で窒素キャリアガスを使用するためのメソッド変換と評価
医薬品 Agilent 8697 ヘッドスペースサンプラ -XL トレイと Agilent 8890 GC システムによる USP 残留溶媒の分析
その他 Determination of Ethylene Oxide and Ethylene Chlorohydrin in Medical Devices using the Agilent 8890 GC and 7697A Headspace Sampler(Agilent 8890 GC と 7697A ヘッドスペースサンプラによる医療機器内のエチレンオキシドとエチレンクロロヒドリンの測定)

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ヘリウム使用の低減や、別の GC または GC/MS キャリアガスへの切り替えについては、アジレントの技術スペシャリストにご相談ください。

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