自動化により COVID-19 研究の課題に対処 

COVID-19 のパンデミックに対応する中、臨床医や研究者は、需要を満たすためにどのように検査数を増やすかという困難に直面しています。一日あたり数十件程度のサンプル処理を行っていた研究施設でも、この状況の変化にあたり、現在は数千単位のサンプル処理が求められており、増加に対応するための解決策を模索しています。

COVID-19 の初期研究で用いる核酸検査や、ウイルス感染者の免疫反応開始を評価するための抗体検査の両方について、サンプルスループットの向上が必要とされています。

両方の検査が重要ですが、研究者が次の問いに答えるために、抗体検査の需要が高まると予想されます。どの程度の人が SARS-CoV-2 に感染しているのか?あとどのくらいで集団免疫が達成されるのか?有効なワクチン候補は?

この記事では、どのように抗体検査の研究を拡大できるかについて検証します。

ラボの取り組みで供給能力を向上

特定種類の抗体が人の血漿に存在するかどうかを判断するために、ELISA(酵素免疫測定法)という検査を用いて人の血液サンプルを分析するのが一般的な方法です。ELISA のメカニズムについて詳しく説明した最近の記事をご覧ください。

実際には、ELISA はマイクロプレートという専用のベッセルで実施します。輸送コンテナが大量の物資を世界中へ効率的に輸送するのと同じように、ラボにおけるマイクロプレートは多数のサンプルを処理するプラットフォームとして機能します。ELISA の通常マイクロプレートには 96 の個別ウェルがあり、携帯電話程度の大きさのコンテナです。必要な実験をコントロールするため数十のサンプルを処理できます。

自動化により COVID-19 研究の課題に対処

多数のサンプルを同時処理できれば、抗体検査を行うための ELISA 研究の効率向上に大いに貢献しますが、ELISA の工程が複数のステップで構成されていることには変わりません。ELISA は、さまざまな試薬の添加、非結合抗体を除去するための洗浄、最終的な分光光度計による反応シグナルの測定を伴う、連続的な手順で行われます。マイクロプレートで数十のサンプルを処理することには数多くのメリットがありますが、COVID-19 研究においては、膨大な数のマイクロプレートを処理する能力が課題となっています。

ラボウェアを支えるハードウェア

輸送コンテナの箱そのものではなく、箱のサイズを規格化したことで、グローバルな商取引は一新されました。これにより基盤インフラストラクチャが整備され、物流網上の移動が促進されたのです。同様に、マイクロプレートの登場で、この形式によるサンプル処理のために設計されたラボ機器の発展につながりました。

BioTek Instruments(アジレント傘下)は、マイクロプレート間で液体試料を吸引・注入するための専用装置や、マイクロプレートに配置されたサンプルの測定用に構成された分光光度計を始めとする検出装置の設計と製造を手掛けています。ELISA プロセスに伴う多数のステップは反復的で煩雑です。BioTek Instruments の装置は ELISA 研究のワークフローを自動化するのに役立ちます。

このような BioTek の機器ではマイクロプレート上で特定の操作を実行できますが、それでも機器にマイクロプレートをセットする「手作業」が必要です。ラボ自動化のインフラストラクチャは、マイクロプレートを操作するために設計された Agilent BenchCel などのロボットにまで及びます。

自動化 ELISA プラットフォームの作成

COVID-19 パンデミックが急速に広がり、特に ELISA を使用した抗体検査のニーズの高まりが明確になる中、アジレントの自動化ソリューションおよび BioTek のスタッフは、これらの機器を統合することに可能性を見出しました。システムは、BioTek 液体処理システムとプレートリーダーとの間に配置される BenchCel Microplate Handler を含むコンパクトなベンチトップソリューションです。このシステムで ELISA ワークフローのほぼすべてのステップを行い、1 日あたり数千の研究用サンプルを処理することができます。

チームは、個々の機器を 1 つのシステムとして統合するための必要なソフトウェアとハードウェアの開発に着手しました。これにより、大規模な研究ラボに有効なソリューションとなる自動化 ELISA プラットフォームを作成することができます。チームは、物理的に離れた状態であっても、共同作業に取り組みました。お互いが反対側の海岸に位置しているというだけではありません。通常は騒がしいベイエリアであれ、静かなバーモント州の町であれ、ソーシャルディスタンスの確保が必要な状況の中、各自が自宅オフィスや地下室から協力を続けたのです。

作業開始から 2 か月以内に、チームは必要な開発作業を完了してシステム統合に成功しました。COVID-19 抗体検査を実施するラボに、機器を数週間以内に出荷できる見込みです。