本稿執筆の時点で、COVID-19 を予防したり治したりするためのワクチンや治療法はありません。SARS-CoV-2 ウイルスを中和する遮断薬として mAb を使用するなど、可能性のある多数の方法が研究されています。
治療法として mAb の研究をさらに進めるのであれば、いくつかのパラメータを十分に検討し理解する必要があります。このようなパラメータは一般的に重要品質特性(CQA)と呼ばれ、バッチ間およびバッチ内で変化する可能性があり、生物製剤の作用に影響を及ぼしうる生物製剤の特性を指します。
COVID-19 スパイクタンパク質の分析を実施する際には、生物製剤のインタクトタンパク質、ペプチド、グリカンプロファイルを理解することも重要です。考慮すべきその他の重要な要素(下記参照)として、凝集およびフラグメンテーションのレベル、タンパク質そのものの特性などがあります。
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凝集および断片の分析
mAb 凝集体により望ましくない免疫原性反応がトリガーされる可能性があるため、凝集レベルを正確に測定することが不可欠です。サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により、現時点での凝集とフラグメンテーションのレベルを把握できます。現在、Cary Eclipse と マイクロプレートリーダーアクセサリを使用した mAb 凝集体のためのプレスクリーニング分析ソリューションをご利用いただけます。これにより凝集分析の時間を大幅に短縮することができます。
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インタクトおよびサブユニットの分析
多くの場合に生物製剤タンパク質は不均一で、フラグメントの混合物や合成時に生成される不純物を含んでいます。逆相クロマトグラフィーによりインタクトタンパク質やサブユニットを分析することで、タンパク質の同定、絶対質量、不純物、翻訳後修飾に関する有益な情報が得られます。これらの情報は生物製剤の全体像の把握に役立ち、したがって、医薬品の作用に影響を及ぼす可能性があるすべてのパラメータを理解することできます。
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インタクトタンパク質の分析
生物製剤において、アミノ酸は、定量および分離が困難な修飾を実行できます。修飾タンパク質は異なる特性を持っているため、不純物として見なされる場合があります。そのため、一部のタンパク質では望ましい治療効果を得られません。塩グラジエントを用いてインタクトの未変性状態のサンプルを分離する疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)により、不純物のプロファイリングを徹底的に追求することができます。
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糖鎖分析
糖鎖はタンパク質の特定の部分に結合し、タンパク質合成の間に測定されます。糖鎖プロファイルは、合成に使用される栄養素のレベルや細胞株など、複数の要因によって決まります。糖鎖は免疫原性や細胞シグナルにおいて大きな役割を果たし、考慮すべき重要な要素となります。キットを使用すれば、迅速かつ確実に、HPLC 分析のために糖鎖を遊離させ、前処理することが可能です。
CQAは決してこれらのオプションに限定されているわけではありません。すべての生物製剤には十分に理解しなければならない独自の問題点や違いがあり、Covid-19 治療用タンパク質にも固有の課題があると考えられます。メソッド開発と分子分析に関するサポートについては、アジレントにお問い合わせください。