免疫反応

COVID-19 は、年齢、人種、性別の区別なく、世界中で多くの人々に影響を与えているかのように思われます。その一方で、このウイルスが体内に侵入した場合の免疫反応は、人によって大きく異なります。ウイルスに感染していてもまったく症状が見られない人もいれば、咳、発熱、筋肉の痛みなどの症状が見られながらも、自宅で安静にしていれば問題がない人もいます。その一方で、呼吸困難、絶え間ない痛み、胸部の圧迫感などを訴えて、治療とモニタリングが必要になるほどに重症化するケースも見られます。

要因となる免疫システムの反応

免疫反応

人によって症状が異なる主な要因は、免疫システムの反応の違いにあると考えられています。異物が体内に侵入すると、免疫システムがこれに反応して免疫細胞が動員され、その後サイトカインが放出されるといった免疫反応が開始されます。ただし、反応が過剰な場合、健康な細胞も損傷する可能性があります。このことはサイトカインが過剰に生成されるサイトカインストームで頻繁に確認されており、場合によっては重度の合併症を引き起こし、死に至る可能性もあります。

中国の研究者による興味深い発見

広州医科大学付属第一病院に設置された呼吸疾病国家重点実験室の研究者たちは、免疫細胞数とサイトカインレベル間のパターンを観察しました。Wenjun らは、アジレントの NovoCyte フローサイトメーターを使用して、COVID-19 の症状の重症度が異なる被験者の免疫反応を調べました。健康な人と比べて、COVID-19 の陽性が確認された被験者は、T 細胞、B 細胞、NK 細胞の数が著しく低下し、血漿中のサイトカイン IL-6 濃度が顕著に上昇していました。また、IL-6 濃度が高い被験者は、肺の損傷度が高いことが X 線検査で確認されたことから、血清中の IL-6 レベルと、検査で測定された肺の損傷度との関連性が認められました。

2 つ目のグループ中国科学技術大学生命科学医学科の Younggang Zhou らも、T 細胞数や CD14 と CD16 が共に陽性の単球サブセット、およびサイトカイン産生レベルに関して同様の結論に至りました。著者らは、健康な被験者、COVID-19 の検査結果が陽性だが ICU での治療が不要な被験者、COVID-19 の検査結果が陽性で ICU での治療が必要な被験者からなる 3 つのグループを比較しました。COVID-19 陽性の被験者全員について、CD4+、CD8+ T 細胞、単球の数が健康な被験者と比べて著しく低下していることが確認されました。

免疫反応

また、ICU での治療が必要な被験者では、健康な被験者と比べて、炎症性サイトカイン IL-6 を産生する CD4+ T 細胞の比率が高いことが明らかになりました。ICU での治療が不要な陽性被験者、または健康な被験者と比べて、ICU での治療が必要な被験者は、CD14/CD16+ 単球でも、IL-6 を産生する細胞の増加が確認されています。

NovoCyte フローサイトメーターがどのように役立つか

研究者たちは、NovoCyte フローサイトメーターを使用して、血液サンプル中の免疫細胞をすばやく免疫細胞の種類ごとに分類することができました。また、サイトカイン産生細胞を検出したり、感染者の血清中に含まれるサイトカインを直接検出したりすることで、免疫反応を確認できました。NovoCyte フローサイトメーターが、細胞を 1 つ 1 つ分析し、高い精度で 1 秒あたり数千の細胞を処理することで、研究者たちは有意義な結果を迅速かつ容易に得ることが可能です。高精度にそして迅速に情報を収集できることは、研究者たちがこの新型ウイルスを理解を深めるのに役立ちます。

現在、世界各国の研究者が、COVID-19 パンデミックを引き起こした新型コロナウイルスの全容解明に真摯に取り組んでいます。地球規模の危機が及ぼす影響を緩和するために欠かせない知識を生み出すには、研究者による連携した取り組みが不可欠です。さまざまなアプローチや異なる種類の機器を使用する幅広い組織が協調することで、COVID-19 の全容解明を支援する上で欠かせないデータを生み出され、解決策や治療法につながります。

参考資料: