COVID-19 検査

 

新型コロナウイルスの感染が拡大するスピードは、1 人の感染者が感染を広げる人数と、次の感染者が発症するまでの期間という 2 つの要素によって決まります。前者は再生産数であり、後者は発症間隔です。例えばエボラの場合、発症間隔は数週間ですが、COVID-19 の発症間隔はほんの数日間です。発症間隔が短いことから、新たな COVID-19 感染者は急速に増えること、感染拡大の防止は難しい可能性があることが分かります。

2020 年 3 月末の時点では、人口の 3 % を超えて COVID-19 の検査をした国はありませんでした。そして今もなお、実施した検査の正確な数については世界各国で大きな差があります。このような状況から、より迅速に検査を行い、結果を得る必要性が浮き彫りになっています。検査を早く実施できればできるほど、結果を早く受け取ることができ、さらなる感染拡大を緩和するための措置をより早く講じることができます。しかし、COVID-19 の検査はどのように行い、どのように高速化することができるでしょうか。 

自動化による検査の高速化

技術、特に自動化が有効です。自動化システムは、ワークフローに不可欠な部分であるサンプル前処理をスピードアップすることにより、検査を高速化し、サンプルハンドリングでエラーを最小限に抑えるために使用されています。

研究者たちは Bravo などのアジレントの研究機器を COVID-19 の研究に用いて、新しい技術およびデータ解析ツールを開発し、生体に関する新たな洞察を生み出しています。科学者たちは、スループットの低い、手動で行うように設計された CDC のプロトコルを調整し、自動分注機で実施できるようにしています。これにより、一部の施設では 1 日に 2,000 個のサンプルが処理できるようになり、ラボの処理能力を向上させ、結果が出るまでに必要な時間を数日間から数時間に短縮しています。

ボストンに拠点を置くバイオエンジニアリング企業は、DNA を合成

ボストンに拠点を置くバイオエンジニアリング企業は、Bravo、アジレントのカスタムオリゴヌクレオチドライブラリ、酵素を使用して DNA を合成し、コロナウイルスの検出に役立てています。また、この企業は他の研究者たちと情報を自由に共有しています。カリフォルニア州の研究グループも Bravo を用いて、COVID-19 に対する取り組みを強化しています。これまでのフィードバックによると、Bravo は自動化に役立つため、ワークフローに欠かせない一部となったということです。1,000 検体のサンプルを処理するという当初の想定を上回り続け、1 日あたりの処理数は 3,000 検体に迫っています。

Bravo は、液体を 1 つの容器から別の容器に移すプロセスを自動化します。人の手で行う場合、液体を移せるのは 1 回に 1 つか数個のリキッドサンプルだけですが、Bravo の場合、1 回に 96 個のサンプルを移すことが可能です。これにより、スループットが向上するだけでなく、正確性と精度を維持すると同時に、従業員の反復性ストレス障害を回避できます。

サンプリング効率の向上に伴い、消耗品に対するニーズも高まります。Bravo の機器は、アジレントが自動分注器向けに特別に設計および製造した 96 ウェルリザーバマイクロプレートを使用します。政府のイニシアチブを支援する欧州の大手製薬会社 2 社では、COVID-19 に対する取り組みにおいて、自動化プロトコルにアジレントのマイクロプレートが使用されています。

Aria Mx/Dx qPCR

qRT-qPCR 技術の役割

qRT-qPCR は強力で費用対効果の高い検出法であり、RNA の抽出と cDNA の増幅(DNA のコピーを無数に生成)、DNA 検出のための蛍光試薬、ターゲット DNA の増幅および検出を行う統合型機器、およびデータ解析ワークフローで構成されています。アジレントは、Absolute RNA キット(RNA 抽出用)、AffinityScript 逆転写酵素(抽出された RNA から DNA への変換用)、増幅および標識用の Brilliant Master Mixes などの qPCR ワークフロー全体で使用される主要試薬、および Aria Mx/Dx qPCR 機器を提供しています。これらの試薬と機器が、COVID-19 への理解を深めようと努めている研究者たちを支えています。

最前線での支援 

1 月、研究および製造を行う企業の PrimerDesign 社は、cDNA 合成に使用される AffinityScript 逆転写酵素の発注について話し合うためにアジレントにコンタクトを取りました。この試薬が必須であること、コロナウイルスの脅威の拡大を認識したアジレントは、同社の依頼に迅速に対応することにしました。PrimerDesign 社は独自のキットを開発し、現在はそれが FDA 承認済みの緊急使用承認(EUA)キット の 1 つとなっているほか、欧州で使用される最初の CE-IVD マーク付きキットの 1 つとなっています。

qPCR を超えて:COVID-19 のマイクロアレイ分析

迅速で費用対効果が高く、分かりやすくはあるものの、qPCR だけがウイルス RNA を分析する方法ではありません。 

qPCR を超えて:COVID-19 のマイクロアレイ分析

数週間前、COVID-19 をめぐる状況が爆発的に拡大し始めた際に、アジレントがマイクロアレイにコロナウイルス配列を追加する依頼に迅速に対応できるかどうか、研究者たちから問い合わせを受けました。それに対して、アジレントは「もちろん可能です」と答えました。

チームは、新型コロナウイルスだけでなく、ほかの 2 つのコロナウイルス(MERS と SARS)についても、配列をアレイに追加することができました。数か月かかることもある設計の最適化プロセスは、2 週間足らずで行われました。マイクロアレイは 48 時間以内にプリントされ、出荷され、研究者の手に届きました。

スピードが必要なことに変わりはありません

COVID-19 の症例は今後数週間でピークを迎えると予想されていますが、現在のパンデミックに対処し、その再流行を防ぐために、検査は現在も今後も必要となるでしょう。検査数を増やすこと、より迅速に結果を出すこと、そしてより迅速な行動をとること、これらすべてが COVID-19 の感染拡大防止だけでなく、COVID-19 への理解を深め、克服するために必要です。

参考資料:

本製品は一般的な実験用途での使用を想定しており、医薬品医療機器等法に基づく登録を行っておりません。

免責事項:アジレント製品を COVID-19 の検査、診断、治療、緩和の用途で使用することは承認されていません。アジレントでは、製品による新型コロナウイルスの検出について検証を行っていません。