4. 2 蛍光検出器(fluorescence detector, FLD)
光を当てると電子が励起され、励起された電子が基底状態に戻る際発光する現象を蛍光と呼びます。蛍光を発する物質を蛍光物質と呼び、このような化合物は蛍光検出器(FLD)で検出できます。励起光と蛍光の波長は蛍光物質に特有なので、FLDはUV-Vis検出器にくらべて感度と選択性に優れています。対象は蛍光物質に限定されますが、誘導体化により蛍光性を持たせることが可能な化合物にも適用できます。光学系を図15に示します。
4. 3 示差屈折率検出器(refractive index detector, RID)
示差屈折率検出器(RID)は、移動相と分析種を含むカラムからの溶出液の屈折率の差を検出します。すべての化合物の検出に利用できますが、感度は良くありません。感度の目安はUV-Vis検出器の1/1000以下です。紫外可視吸収や蛍光を持たない化合物でも検出可能なので、糖類や合成高分子の検出などに用いられます。グラジエント溶離には適用できません。光学系を図16に示します。
4. 4 蒸発光散乱検出器(evaporative light scattering detector、ELSD)
蒸発光散乱検出器(ELSD)は、カラムからの溶出液中の移動相を蒸発、除去した後、分析種の粒子の散乱光を検出します。装置構成を図17に示します。移動相は揮発する必要があるため、リン酸塩のような不揮発性の塩を含む移動相は使用できません。また、揮発しやすい分析種は、移動相と共に揮発してしまうため適用できません。しかし、UV-Vis吸収や発蛍光性のない化合物でも検出することができ、汎用性に優れています。糖類や脂質、ポリマーの分析に利用されます。この特徴はRIDと同じですが、RIDはグラジエント溶離に対応できないのに対し、ELSDはグラジエント溶離にも利用できます。感度はRIDより優れていますが、検量線は通常、直線にはならないので、2次あるいは3次曲線で作成します。
5 HPLCにおけるピーク同定と定量
HPLCのピーク同定は、標準試料のピークの保持時間をもとに行います(図18)。DADのUV-Visスペクトルのような情報が同時に得られる場合は、スペクトルの照合を加味して同定することもできます。
分析種の定量は、標準試料溶液の濃度系列を調製し、クロマトグラムからピーク面積またはピーク高さを求め検量線を作成して行います。定量法には、絶対検量線と内標準法があります。
絶対検量線法は、標準試料溶液の濃度系列を調製し、これを分析して得られたクロマトグラムからピーク面積、もしくはピーク高さを算出して、標準試料溶液の濃度とピーク面積、もしくはピーク高さをプロットした検量線を作成します(図19)。実試料を分析して得られた分析種のピーク面積または高さと検量線から、実試料中の分析種の濃度を定量します。
内標準法は、一定濃度の内標準物質(I.S.)を添加した標準試料溶液の濃度系列を調製し、標準試料溶液の濃度と標準試料とI.S.のピーク面積比もしくはピーク高さ比をプロットして検量線を作成します(図20、21)。