3. 4 イオン交換クロマトグラフィー(Ion exchange chromatography)

イオン交換クロマトグラフィーは、固定相にイオン交換基(陽イオン交換の場合はスルホ基など陰イオン性の官能基、陰イオン交換の場合は4級アンモニウム基など陽イオン性の官能基)を導入した充塡剤を、移動相に緩衝液など塩を含む水溶液を用いて、イオン性化合物を分離します。アミノ酸や有機酸、タンパク質の分離等に用いられます。図7に、陽イオン交換カラムを用いたタンパク質の分析例を示します。

図7 陽イオン交換カラムを用いたタンパク質の分析例

図7 陽イオン交換カラムを用いたタンパク質の分析例

カラム Bio WCX、 4.6 x 50 mm、1.7 μm(P/N 5190-2441)
移動相 A:20 mMリン酸ナトリウム (pH 6.5)
B:A + 1.6 M塩化ナトリウム
グラジエント 0 ~ 50 % B
検出器 UV

参考:その他のAgilent バイオ医薬品分析用LCカラム情報

3. 5 イオン排除クロマトグラフィー(Ion exclusion chromatography)

イオン排除クロマトグラフィーは、イオン交換樹脂を固定相として用いますが、イオン交換クロマトグラフィーとは異なり、イオン交換基と分析種間の静電的な反発力を利用します。有機酸のような弱酸は、化合物により酸性溶液中での解離度が異なるので、電荷の強さも異なります。イオン交換基と同じ符号の電荷をもつ分析種は、その電荷の強さによりイオン交換基から受ける反発力が異なります。有機酸は水溶性の高い高極性化合物であるため、RPCでの分離には適してしていませんが、陽イオン交換樹脂を固定相とし、酸性水溶液を移動相とすることで、有機酸類を分離することができます。図8に有機酸の分離例を示します。解離度の大きい有機酸は電荷が大きいため、強い反発力を受けて早く溶出します。一方、解離度の小さい有機酸は電荷が小さく反発も弱いため、溶出が遅くなります。

図 8 イオン排除カラムを用いた有機酸の分離例

図 8 イオン排除カラムを用いた有機酸の分離例
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カラム Hi-Plex H、7.7 × 300 mm、8 μm(P/N PL1170-6830)× 2
移動相 4.5 mM 過塩素酸
温度 45 ℃
検出 UV-Vis(BTB法)

参考:Hi-Plex Hカラムによる炭水化物、アルコール、有機酸分析例

3. 6 サイズ排除クロマトグラフィー(Size exclusion chromatography)

サイズ排除クロマトグラフィーは、ここまで説明してきた分離モードとは異なり、固定相と分取種の間の相互作用ではなく移動相中の分析の分子サイズの違いにより化合物を分離します。図9に概念図を示します。充塡剤の細孔径より小さい分子はカラム内をゆっくり通過する一方、細孔径より大きい分子はカラム内を素早く通過していきます。

SECは分析種の溶解性により有機溶媒系と水系に大別され、有機溶媒系SECはgel permeation chromatography, GPCと呼ばれます。図10にGPCによるポリスチレンの分離例を示します。

図 10 GPCによるポリスチレンの分離例

図 10 GPCによるポリスチレンの分離例
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カラム PLgel 5 μm MIXED-C、7.5 × 300 mm、5 μm(P/N PL1110-6500)
移動相 THF
流速 1.0 mL/min
検出 UV

参考:Agilent GPC/SECカラム情報