MSの基礎 - システムの設定

システムから有益な質量スペクトルを得るには、システムが使用できる状態にあり、正しくセットアップされている必要があります。この項では、以下のトピックについて解説します:


チューニング 質量分析計では、イオン源、質量分離部、検出器の操作上のパラメータが、得られる質量スペクトルに影響を与えます。

チューニングは、質量分析計をチェックしたり、得られたスペクトルが以前に測定した標準と類似していることを確認したりするために実施します。

質量分析計の電子的なチューニングでは、イオン源、アナライザ、検出器の電圧調整を行ないます。これらの電圧値は得られる質量スペクトルに影響を与えます。

「標準」セットの条件に質量分析計を合わせる際には、パーフルオロトリブチルアミン(PFTBA、別名FC-43)などを使用します。

チューニングはデータの質に影響を与えるほか、採取したスペクトルと基準となるスペクトルデータを対応させられるか否かにも影響を及ぼします。

  • イオン源のパラメータは、生成されるイオンの数や、アナライザに送られイオンの数、アナライザに送られる所定の質量イオンの相対量に影響を与えます。
  • 四重極装置にあるアナライザのパラメータは、ピーク幅、質量の割り当て、質量スペクトルの分解能、感度に影響を与えます。
  • 検出器のパラメータは、信号強度およびシステムの感度に影響を与えます。すべてのチューニングパラメータは、データの質に影響を与えるほか、採取したスペクトルと基準となるスペクトルデータを対応させられるか否かにも影響を及ぼします。
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適切な質量範囲の設定 質量範囲は、所定のサンプルから得られる情報量を決定します。どのような質量範囲を選択するかは、サンプルによって決定されます。

質量範囲が狭すぎる場合には、情報が失われて回復不能になることがあります。例えば、下図のスペクトルでは、走査範囲が狭すぎるために、m/z=194にあるはずのカフェインの分子イオンが検出されていません。

質量範囲が広すぎる場合には、データファイルが必要以上に大きくなります。この場合には、時間あたりの数を減らした走査を実施することができます。

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適切な閾値の設定 閾値の設定は、実際の信号として認識される最小存在量を決定します。閾値によって指定された値より小さい質量ピークは、ノイズとして除外されます。

閾値を高すぎる値に設定した場合は、重要なサンプル成分由来のデータが見逃され、採取や保存ができなくなる可能性があります。見逃されたデータを再び入手することはできません。

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システム性能の確認 質量分析計は、独立して機能する多くの部品で構成される複雑な装置です。すべての部分が適切な性能であることを確認するには、サンプルからデータを採取し、それらの結果と許容される結果とを比較する必要があります。

チューニングで設定したパラメータのほかに、以下の事項をチェックする必要があります:

  • バックグラウンドのレベル
  • クロマトグラフィ性能
  • システムの感度
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システム性能の維持 MSシステムを最高の性能で作動するように維持するには、以下の作業を行なう必要があります:
  • 良好な真空の維持
  • MS内の高温維持
  • MSに持続的に流れこむキャリアガス流量の維持
  • 必要に応じた消耗品の交換
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メソッドの開発 多くの分析では、サンプル(または対象となる分析種)のタイプによって、メソッドが決定されます。メソッドでは、質量範囲、温度、閾値などを指定します。

サンプルの成分が未知の場合には、メソッドに以下の項目を含める必要があります:

  • 広い質量範囲
  • 低い閾値
  • 広い範囲の成分分析が可能なクロマトグラフ条件
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まとめ 質量分析計(特に四重極型)はさまざまな方法で調整を行うことができます。分析者は分析要件と一致するパラメータを選択する必要があります。