MSの基礎 - 3.質量スペクトルの基礎


質量スペクトルの横軸は、分子イオンおよびフラグメントイオンの質量電荷比(m/z)を表します。

質量スペクトルの解析とは、その質量スペクトルの情報を推定することで分子を同定するプロセスです。解析は「専門家」または「専門家」に類似するプログラムにより実施されます。また、解析法を用いれば、データベースにない分子を同定することができます。


単一電荷イオンの質量スペクトル
分子イオンおよびそのフラグメントイオンの生成量を質量電荷比(m/z)に対してプロットし、質量スペクトルを生成します。一般に、手に入れたい情報は、分析対象物質の同定に関する確かなる情報です。

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水分子の質量
水分子の質量は18 Daです。この質量は2つの水素原子と1つの酸素原子の合計です。多数の水分子の質量を測定し、分子数を質量の関数として記録したとすると、このようなグラフになります。水分子はすべて18 Daの質量を持っています。存在量の情報は、検出した所定の質量の分子数を反映しています。

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単純な質量スペクトル
イオン源では、多くの水分子がイオン化されます。いずれのイオンもフラグメントに分解されない場合は、得られるプロットは単純な質量スペクトルになります。質量スペクトルのX軸は、質量電荷比(m/z)を示しています。

これらの水イオンでは、元の分子量が18で電荷が+1であることから、m/z=18になります。

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フラグメンテーション
水分子はたいていの場合、イオン化されるときにフラグメントに分解されません。しかし、約20%の割合で、分子イオンが1つの水素原子を失います。このため、m/z=17とm/z=18にラインを持つ質量スペクトルになります。

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分子イオン
分子から1つの電子が取り除かれたイオンを、分子イオンと呼びます。分子イオンは1つの電子を失ったイオンであることから、名目上の質量は中性分子と同じになります。スペクトル中の他のイオンは、すべて分子イオンの分解に由来しています。

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同位体
塩素には、Cl-35とCl-37という2つの同位体があります。塩化水素分子が質量分析計のイオン源でイオン化されると、質量の異なる2種類の塩化水素イオンの存在が検出されます。塩化水素イオンがまったく分解しなかった場合は、塩化水素の質量スペクトルには2つのピークができます。うち1つがm/z 36、もう1つがm/z 38になります。

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相対存在量
これらのピークの相対的な高さは、自然界のCl-37に対するCl-37の比率に一致します。m/z=38のピークの相対存在量は33%になります。

存在量の軸(質量スペクトルの縦軸)は、絶対的存在量または相対的存在量で定義することができます。通常、質量スペクトル中でもっとも高いピークが基準ピークとなり、これが相対存在量100%と定義されます。

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同位体サイン
塩素の例では、2つのピークのパターン、すなわち3:1の相対比で分けられた2つの部分は、元の分子に塩素原子が1個存在することを示しています。このようなパターンを同位体サインと呼びます。有機質量分析では、きわめて特徴的で強度の大きな同位体ピークを示す元素が存在します。この典型が、塩素と臭素です。同位体サインは質量スペクトルで容易に確認できます。

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炭素数の決定
単一の電荷を持つ分子イオン中に存在する炭素数を決定する方法に、C-13とC -12由来のピークの相対存在量を利用する方法があります。

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論理的損失
フラグメンテーションでは、化学原理に基づく特定の喪失のみが起こり得ます。そうした喪失を論理的喪失と呼びます。

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