MSの基礎 - ハードウェア

質量分析法の主なハードウェアコンポーネントは以下のとおりです:


質量分析計
分子が質量分析計に導入されると、分子はまずイオン化されます。それに続いて、生成したイオンが質量分離され、カウントされます。質量電荷比に対してイオン量をプロットしたものが質量スペクトルです。

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真空システム
質量分析計を適切に作動させるためには、その内部を真空にする必要があります。イオン源、質量分離部、検出器はすべて真空条件下にあります。この真空システムにより、生成したイオンが他のイオンや分子と衝突せずに、イオン源から検出器へ移動できるようになります。

質量分析計を効率的に作動させるだけの真空を達成するには、一般に2台のポンプが必要です。高真空ポンプの排気口に低真空ポンプを接続することで、高真空状態が得られます。

一般に用いられるポンプの組み合わせは以下のとおりです:

  • 拡散ポンプ(複数の場合もあり) + ロータリーポンプ
  • ターボ分子ポンプ(複数の場合もあり) + ロータリーポンプ
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平均自由行程
電場および磁場に導かれて動く生成したイオンは、他の分子との衝突による力を受けないようにする必要があります。そのため質量分析法では、イオン化時から検出時までに生成したイオンが他の分子と衝突する機会をきわめて低く抑えることのできる真空システムが必要とされます。荷電粒子の平均自由行程は一般に、イオン化から検出までの距離より大きくなります。
圧力(Torr)
平均自由行程(m)
760
6.0x10-8
1
4.5x10-5
10-3
4.5x10-2
10-5
4.5x10
10-7
4.5x102
10-9
4.5x104

サンプル注入口
質量スペクトルを得るための最初のステップは、サンプル注入口から分子を質量分析計に入れることです。一般に、分子の受ける圧力は、注入口から移動するにつれて大気圧から徐々に低くなります。

気体、液体、固体の化合物は、それぞれに応じて設計された注入口からイオン源に導入することができます。この過程は、サンプルの状態や質量分析計の真空システムに応じて、さまざまな方法で行なうことができます。

一般的なサンプル法は以下のとおりです:

  • GCで用いる直接およびスプリット注入による方法
  • 直接注入プローブ(DIP)による方法
  • バッチ法

いずれの場合も、イオン源に入るときにはサンプルが気化されている必要があります。

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イオン源
サンプル分子はサンプル注入口からイオン源に導入されます。質量分析計がサンプルを分析できるようにするには、サンプル分子をイオン化する必要があります。

イオン源では、分子が先ずイオン化されその後フラグメンテーションのプロセスがあります。その後、生成したイオンは質量分離部に送られます。

電子イオン化(EI)の場合は、比較的エネルギーの高い電子(70 eV)が分析するサンプル分子と相互作用を起こします。これらの相互作用により、(主として)正イオンが生じます。イオン化されると、その分子イオンは正確に予測できるパターンでフラグメンテーションを起こします。EIは直接的なプロセスです。すなわち、分子と電子の間の相互作用により電子の持つ運動エネルギーの一部が電子エネルギーとして分子絵移動します。

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化学イオン化(CI)の場合は、サンプルとキャリアガスに加えて、多量の試薬ガスをイオン化室に導入します。サンプルより試薬ガスのほうが多いことから、放出された電子の大部分は試薬ガス分子と衝突し、反応イオンを生成します。これらの反応イオンは、一次および二次あるいは三次反応プロセスのなかで平衡状態となります。そして、さまざまな形でサンプル分子とも反応し、サンプル由来のイオンを生成します。CIは、イオン生成に関わるエネルギーが低いことから、電子イオン化よりも「穏やか」なイオン化と言えます。CIではフラグメンテーションが少なくなることから、CIスペクトルでは通常、分子量関連イオンの存在量が多くなります。このため、CIはサンプル化合物の分子量推定によく用いられます。


質量分離部
質量分離部では、イオンが質量電荷比(m/z)に基づいて分離されます。イオンの選択および分離には、以下の4種類の質量分離部(アナライザ)が用いられます:

  • 飛行時間型(TOF)
  • 高周波型(四重極およびイオントラップ)
  • フーリエ変換型:イオンサイクロトロン共鳴(ICRまたはFTMS)
  • 磁場型
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質量分離部は、質量電荷比(m/z)に基づいてイオンを分離します。特定の質量分離条件と一致するイオンのみが、所定の時間に質量分離部を通過します。

検出器
検出器はイオンをカウントし、イオンの総数に比例する信号を出力します。サンプル分子より生成したイオンが質量分離部で質量電荷比により分離されると、イオンが検出され、データシステムにデータが送られます。

検出器は、イオンを収集してカウントするために用いられます。空間で分離される飛行時間型、四重極型、イオントラップ型のいずれのアナライザを用いても、特定の質量電荷比を持つイオンのみが所定時間に検出されます。検出器内にイオンが入ると、信号が生成され、データシステムで表示されます。

これらのイオンの検出量を質量電荷比(m/z)の関数としてプロットしたものが質量スペクトルです。

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データシステム
データシステムには、おもに以下の3つの目的があります:

  • イオン源、アナライザ、検出器の動作条件の制御
  • サンプル化合物の質量スペクトルのグラフィック表示
  • 同定および定量のためのデータ処理
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