AAV ヘルパーフリー システム
掲載の製品はすべて試験研究用です。診断目的にご利用いただくことはできません。
遺伝子の発見から遺伝子機能の理解へと研究対象が移るとともに、遺伝子発現の研究がますます重要となっています。しかし、細胞によっては従来の方法でのトランスフェクションが非常に難しかったり、ほぼ不可能であることもあり、遺伝子発現研究がトランスフェクションの容易な細胞に限られてしまうという問題があります。このような問題を解決するために、幅広いホストへの高い効率での遺伝子導入が可能なウイルスベクターが開発されています。AAV ヘルパーフリーシステム*は極めて安全性の高いシステムでありながら、幅広いホストに対して高い効率で遺伝子導入が可能です。1
組み換えアデノ随伴ウイルス(AAV)は分子生物学的研究分野や臨床治療のツールとして幅広く利用できることが証明されています。1 アジレント(旧ストラタジーン)のAAV Helper-Free Systemは従来法に比べて幅広い細胞株へ遺伝子を高効率に導入可能な、ウイルスを用いた遺伝子導入システムです。本システムでは哺乳類細胞でのタンパク質の発現が可能で、発現されたタンパク質は哺乳類細胞内でしか得られない翻訳後修飾や折りたたみ構造を持つことができます。組換えAAVによる遺伝子導入には、ホストの細胞分裂とは関係なく起こるので、分裂細胞、非分裂細胞の双方で利用が可能です。本システムを使うことで107 vp/ml以上という高いタイターの組換えAAVを簡単に作製することができます。
組換えAAVはepichromosomalにとどまり、分裂の遅い細胞や分裂していない細胞では、長期間の安定した発現が得られます。分裂の速い細胞ではepichromosomalの組換えAAVを徐々に失います。高い感染率(MOI)を用いた場合やアデノウイルスのレプリカーゼが存在している場合にはホスト細胞ゲノムへの組み込みが起こります。ほとんどの哺乳類細胞ではゲノムへの組み込みレベルが低いため、目的の遺伝子をホストのゲノム内に安定的に組み込み、長期間の実験を可能にするためには、安定して高レベルで発現する細胞を選別して培養する必要があります。
AAVは自然に複製されることはなく、通常はAAVウイルス粒子を産生するためにはアデノウイルスのようなヘルパーウイルスの共感染が必要です。本システムではAAVウイルス粒子の産生に必要なアデノウイルス由来の遺伝子を含むpHelperベクターを使用しており、次のような利点があります。
従来のウイルスベクターシステムでは組み換えによって野生型ウイルスが再び産生されてしまうということが大きな懸念点でした。アジレント(旧ストラタジーン)のAAVヘルパーフリー システムでは、AAV-2 ITRを持つプラスミド(pAAV-LacZ)と rep/cap-遺伝子を持つプラスミド(pAAV-RC)は相同領域を持たないので、組み換えによる野生型AAV-2の産生を防止できます。本システムは、ヘルパーウイルスが不要な方法であり、またAAVにはヒトの疾患との関連性がないため、極めて安全性の高いシステムです。
本システムでは、発現させる遺伝子をクローニングしたベクター(pAAV-MCSまたはpAAV-CMV-MCS)を感染性ウイルス粒子の産生に必要な遺伝子を持つ2つのベクター(pAAV-RCとpHelper)とともにパッケージング用の細胞株にトランスフェクションします。次に、細胞可溶化液から高タイターの組換えAAVを回収します。そして標的細胞に感染させる、というワークフローになります。別途購入可能なpAAV-IRES-hrGFP vectorを使用することで、1つのベクターで目的遺伝子の発現とhrGFPレポーター・タンパク質を利用したタイターの測定が可能になります。
pAAV-RC ベクターには感染性のウイルス粒子を作るのに必要で野生型AAV-2ゲノムに由来する rep と cap がコードされています。pHelper ベクターには HEK293 細胞で 高力価のAAV-2 を産出する際に必要でアデノウイルス由来のE2A、E4、VAがコードされています。さらにパッケージングに用いるHEK293 細胞のゲノムには、アデノウイルス由来の E1A と E1Bがコードされていますので、これらプラスミドが全て同時にトランスフェクションされた場合にのみAAVウイルス粒子が産生されます。
本システムで作製される組換えAAVのタイターは107 vp/ml 近く、これを超えることもあります。さらに高いライターが必要な場合には、濃縮するで>1011 ~ 1012 vp/ml程度の高いタイターを得ることも可能です。AAVゲノムは通常はepichromosomalにとどまり、しばしば高分子量のコンカテマーを形成します。分裂の遅い細胞や分裂していない細胞では、AAVがepichromosomalに存在し、長期間にわたる安定した発現が得られます。分裂の速い細胞では、epichromosomalのAAVゲノムは時間の経過と共に失われます。ホスト細胞の染色体へのAAVゲノムの組み込みが起こる可能性もあり、分裂細胞でも長期間の遺伝子発現を維持することも可能です。高い感染率(MOI)で感染させたり、アデノウイルスのレプリカーゼを共存させることで、組み込み効率を上げることができます。そのような目的で野生型のアデノウイルスを使用する場合には、バイオセイフティーに関する注意が必要です。
pCMV-MCSは 4.5 kb のクローニングベクターです。目的遺伝子をマルチクローニングサイトへクローニングします。クローニング後、発現カセットをNotIで切り出し、pAAV-MCSベクター、pAAV-LacZベクターにサブクローニングすることが可能です。
pAAV-LacZベクターは7.3 kb の長さの、自律複製能をもたないAAVベクターです。このベクターは、クローニングベクターとして、またはことロールベクターとして使用可能です。このベクターを Not I によって切断することでLacZ カセットを取り除き、pCMV-MCS ベクターからNotIで切り出した目的遺伝子を含む発現カセットをクローニングすることができます。また、このベクターは LacZを レポーターとして用いたコントロールとしても使用可能です。
pAAV-RCベクターには感染性のウイルス粒子を作るのに必要なキャプシドタンパク質とDNA複製タンパク質を作る cap と rep 遺伝子がコードされています。ウイルス粒子の産生のためにパッケージング細胞株へ同時にトランスフェクションします。
pHelperベクターには、AAVの lytic phase を誘発するのに必要なアデノウイルス由来の遺伝子(E2A、E4、VA RNAs)がコードされています。ウイルス粒子の産生のためにパッケージング細胞株へ同時にトランスフェクションします。
ViraPack 形質導入キットはAAVヘルパーフリー システムとは別に購入可能です。このキットは HEK293 細胞へのプラスミドの形質導入用に特別に開発されたものです。
AAV-293 細胞はAAVウイルス粒子のパッケージングのために最適化されたHEK-293 細胞株です。
AAV-HT1080 細胞株はウイルスのタイター測定に使用します。
pAAV-IRES-hrGFP ベクター(別売り)はバイシストロン性の発現カセットを含おり、リボソームエントリーサイト (IRES)の下流にコードされた Vitality hrGFP が二番目の読み枠として発現されます。hrGFP 遺伝子はウイルス産生用の HEK293 細胞の形質導入効率をモニタリングするために有用なマーカーとしても使えます。このベクターにはほかにも、MCSのC-末端にFLAG配列(3×)を持つという特徴があります。外来遺伝子はタグと同じフレームでクローンニングする事が可能で、発現させたタンパク質はFLAGを利用した精製や、抗‐FLAG抗体による検出が可能です。
pAAV-hrGFP ベクターは pAAV-LacZ ポジティブ コントロールベクターの代わりに使用できます。Vitality hrGFP レポーター遺伝子により、 in vivo でパッケージング細胞株へのトランスフェクション効率を確認することが可能です。また、hrGFPにより蛍光顕微鏡やフローサイトメトリー(FACS)を使用した解析が容易にできます。
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1. 1Matsushita, T., et al. (1998), Gene Therapy. 5: 938-945
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