HPLC 分離の仕組み
分子と充填粒子間のさまざまな化学的および/または物理的相互作用によって、HPLC カラムの選択性が決まります。常に広がり続けるアプリケーションの範囲に対応する幅広い種類の HPLC カラムと充填材があります。カラムの化学的選択性により、テストサンプル中の成分を互いに分離することができます。これらの分離された成分は、カラムから出るときに HPLC 検出器によって検出されて、測定されます。
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)は、分析化学における中核技術です。ルーチン HPLC は、医薬品開発、品質管理(QC)、品質保証(QA)、食品および環境試験などを行うラボでの分析によく使用されます。分取用 HPLC、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)、超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC)などの特殊な LC 技術も使用されます。分析するサンプルと量によって、選択する技術は異なります。
HPLC の性能を向上させ、最良の分析結果を得るには、分析担当者が HPLC の概念の背後にある知識と理論を活用する必要があります。ここで紹介する HPLC および UHPLC の基本と原理、よくある質問(FAQ)により、HPLC の分析結果の信頼性を高めることができます。あるいは、HPLC コミュニティでアジレントの専門家にお問い合わせください。アジレントがお客様の HPLC の課題をどのように解決するかが分かります。
分離検出の基礎をじっくりと。
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高速液体クロマトグラフィー(HPLC)とは? |
HPLC は、溶液に溶解した混合物中の化合物を分離・同定・定量するために使用されます。HPLC の分離では、固定相と呼ばれる粒子(通常、直径 3~5 ミクロン)が充填された HPLC カラムに少量の液体サンプルを注入します。サンプルの個々の成分は、HPLC ポンプによって高圧で送られる液体(移動相)とともに HPLC カラムを通過します。QC および QA ラボにおけるルーチン分析で使用される液体移動相の流量は一般的に 1~2 mL/min です。 |
分子と充填粒子間のさまざまな化学的および/または物理的相互作用によって、HPLC カラムの選択性が決まります。常に広がり続けるアプリケーションの範囲に対応する幅広い種類の HPLC カラムと充填材があります。カラムの化学的選択性により、テストサンプル中の成分を互いに分離することができます。これらの分離された成分は、カラムから出るときに HPLC 検出器によって検出されて、測定されます。
クロマトグラフィー極性が類似した分子は互いに引き付けられる性質があります。異なる極性を持つ分子は、親和性が非常に弱くなるか、あるいは互いに反発し合う可能性があります。順相(NP)クロマトグラフィーでは、非極性物質は早く溶出し、極性物質はより長いリテンションタイムで溶出します。HPLC 分析の一般的な形式である逆相(RP)クロマトグラフィーでは、極性物質が最初に溶出します。非極性物質が多いほど、保持される量が多くなります。つまり、その物質がカラム上に長く留まります。
HPLC ポンプの仕組み |
HPLC ポンプは、HPLC システムの中を溶媒(移動相)が流れるようにするために使用されます。移動相は、ミリリットル/分(mL/min)で表される決まった流量でシステムを通過します。通常は 0.4~2 mL/min、200~1300 bar です。HPLC ポンプはまた、異なる溶媒を混合することもできます。溶媒が時間の経過とともに徐々に混合されると、溶媒グラジエントが生成されます。通常、最初の溶媒は A と呼ばれ、2 番目の溶媒は B と呼ばれます。HPLC ポンプは、溶媒 B の割合を低い割合から高い割合に徐々に変化させることで、溶媒 A よりも溶出強度が高くなります。 |
バイナリ HPLC ポンプは、高圧下で2種類の溶媒を混合します。バイナリポンプは高圧グラジエントポンプとも呼ばれ、2 つのポンプヘッドを備えています。バイナリポンプにより、要求の厳しい高速分析に最適な、効果的なグラジエント分離を実現します。日常的な HPLC および UHPLC で信頼性の高いグラジエントを実行できます。バイナリポンプはLC/MSをはじめ、多くの用途に最適です。
クォータナリ HPLC ポンプは、低圧グラジエントポンプとも呼ばれます。1 つのポンプヘッドを使用して、比例バルブによって事前に混合された溶媒を大気圧下で送り出します。クォータナリ HPLC ポンプは、最大 4 つの溶媒から移動相を構成できる柔軟性を備えており、メソッド開発や堅牢なルーチン分離によく使用されます。
注:また、いわゆるイソクラティック HPLC ポンプというものもあり、これは HPLC アプリケーションの移動相として 1 つの溶媒または 1 つの一定溶媒混合物を供給する 1 つのポンプヘッドユニットで構成されます。これらには比例バルブがないため、通常、実質的に脈動のない溶媒供給と安定した流量が実現できます。イソクラティック HPLC ポンプは、単純な QC タスクや日常的なアプリケーションに最適です。 |
イソクラティック溶出では、移動相の組成は時間が経過しても一定に保たれます。イソクラティック HPLC メソッドは品質管理(QC)ラボでよく使用され、シンプルでコスト効率の高い技法です。イソクラティック条件は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)およびサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を実施するときに、ポリマー分析およびバイオ分析のラボで使用されます。
グラジエント溶出では、移動相溶媒の組成が時間とともに徐々に変化します。グラジエント HPLC メソッドは、複雑なサンプルを分析する場合(食品安全性試験)や、未知の混合物に対するメソッド開発(プロテオミクス、リピドミクス、メタボロミクス)によく使用されます。
分析対象物は、HPLC カラム充填材と移動相の間の化学的および物理的分子相互作用(吸着や分離など)の違いによって分離され、結果的にリテンションタイム(移動速度)に違いが出ます。リテンション、選択性、ピーク容量、Van Deemter の式、ファンデルワールス力といった主要なパラメータは、HPLC 分離とその後の分析中にカラム内で何が起こるかを説明するのに役立ちます。HPLC 式の詳細な説明は、Agilent LC ハンドブックに記載されています。
液体クロマトグラフィー用の一般的な HPLC カラムは、通常は表面に化学相が結合したシリカ粒子が入ったステンレス製の円筒で作られています。カラムサイズは感度と効率に影響し、カラムにロードできる分析対象物の量を決定します。ある量のサンプルをカラムに注入すると、サンプル内の分析対象物は HPLC カラムの材料とわずかに異なる相互作用をします。分析対象物とカラム材料の相互作用の保持(r)の違いにより、分離が起こります。
HPLC および UHPLC 分析に最も一般的に使用される検出器には次のものがあります。
検出器から出力されるデータは液体クロマトグラムと呼ばれます。HPLC システムを質量分析計に接続することも可能で、これは LC/MS と呼ばれます。
超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC)とは? |
UHPLC は、低拡散 HPLC システムで 2 μm 未満の分離粒子を使用するものとして定義されます。UHPLC の一般的な流量は 0.2~1 mL/min で、サンプル注入量は 1 µL 未満です(注:ルーチン HPLC の注入量は通常 1~2 µL です)。 分析用 HPLC と UHPLC の違いは、分析速度の向上、クロマトグラフィー分解能の向上、ピーク容量の増加であり、通常、より高いシステム圧力と検出器データレートが必要になります。 |
高速ポンプはディレイボリュームが少なく、ナローボア UHPLC アプリケーション向けに超高速グラジエントを実行します。UHPLC による超高速グラジエントは、医薬品、化成品、食品および消費者製品の試験に使用されます。ディレイボリュームが低い HPLC は、質量分析計(LC/MS)に接続するのに理想的です。
フレキシブルポンプタイプは通常、超高速メソッド開発に使用され、マルチメソッドシステムに適しています。Agilent 1290 および 1260 Infinity II フレキシブルポンプを用いて、ユーザーは自動グラジエント形成と移動相ブレンドにおいてより優れた柔軟性を実現できます。
ISET は、既存の HPLC メソッドを他のシステムに移管できるようにする機器制御ソフトウェアの一部です。HPLC メソッド移管は、特に規制の厳しいラボ環境にとって重要なトピックです。ISET は、ハードウェアを変更することなく、どのメーカーの HPLC メソッドでも移管できます。
次の表では、HPLC と UHPLC の違いをより技術的な観点から比較しています。この表には、違いとなる一般的な特徴も含まれていますが、特具体的なアプリケーションや特殊な LC システム構成によって異なる可能性があります。分析を行う具体的な LC カラムとサンプルによって実際の最大動作圧力が定義されますが、これは通常、利用可能な最大システム圧力よりも低くなります。
カテゴリ | 一般的な LC カラム粒子径(µm) | 一般的な LC カラム内径(mm) | 一般的な流量範囲(mL/min) | 一般的な検出器データレート(Hz) |
分析用 HPLC システム | 3~5 | 3~4.6 | 1~2 | 10~120 |
分析用 UHPLC システム | < 2~3 | 2.1~3 | 0.2~1 | 25~240 |
高速ポンプは一般的に、ハイスループット分析、堅牢な HPLC メソッド条件、および質量分析検出(LC/MS)のフロントエンドとして使用されます。次の表は、Agilent UHPLC ポンプの種類とアプリケーションの例を示したものです。これらのポンプはすべて、異なる HPLC からの既存のメソッドのシームレスなメソッド移管を可能にするインテリジェントシステムエミュレーション技術(ISET)に対応しています。
圧力(bar) | UHPLC ポンプ | アプリケーション |
1300 | 1290 Infinity II ハイスピードポンプ |
Determination of Sweeteners, Preservatives, and Caffeine in Various Food and Consumer Products(各種食品および消費者製品中の甘味料、保存料、カフェインの測定) Agilent InfinityLab 2D-LC ソリューションを用いた脱塩処理の自動化によるオリゴヌクレオチドの 2D-LC 分析 Peptide Mapping on Monoclonal Antibodies using the Agilent 6545XT AdvanceBio LC/Q-TOF(Agilent 6545XT AdvanceBio LC/Q-TOF によるモノクローナル抗体のペプチドマッピング) A Fast Analytical LC/MS/MS Method for the Simultaneous Analysis of Barbiturates and 11-nor-9-carboxy-Δ9-tetrahydrocannabinol (THC-A) in Urine(尿中のバルビツール酸と 11-ノル-9-カルボキシ-Δ9-テトラヒドロカンナビノール(THC-A)の同時分析のための高速分析 LC/MS/MS メソッド) |
1300 | 1290 Infinity II フレキシブルポンプ |
5991-0792EN Analysis of nucleoside phosphoramidites (raw material for oligonucleotide synthesis)(ヌクレオシドホスホロアミダイト(オリゴヌクレオチド合成原料)の分析) 5994-3498EN |
800 | 1260 Infinity II フレキシブルポンプ |
5994-6126JAJP Does your Bamboo Coffee Cup Give off Melamine?(竹製のコーヒーカップからのメラミンの溶出について) 5994-1966EN Agilent 1260 Infinity II Prime LC と ISET:Waters Alliance LC のエミュレーションによるメトクロプラミドとその不純物の分析 5991-9394JAJP |