重要ポイント

  • 代替タンパク質の世界市場は、2029 年までに 366 億 1000 万米ドルに達すると予測されています。これは、2022 ~ 2029 年の予測期間中のさまざまな要因に応じて、10 ~ 25 % の予想 CAGR(年平均成長率)になります
  • カーギルのグローバル FATitudesTM 調査によると、消費者の 55 % が持続可能な食品を購入する可能性が高いと考えられます
  • より安全で健康的で持続可能な選択肢を生み出せるように市場が進化するにつれて、代替食品とタンパク質の厳格なテストが今後必要となります
重要ポイント
代替タンパク質を含むシャルキュトリーボードの写真

代替タンパク質とは?

代替タンパク質とは、非動物由来のタンパク質を提供する食品または原材料・飲料です。多くの場合これらは、植物ベースのタンパク質や、細胞培養ベースまたは発酵ベースのタンパク質であったり、植物と細胞培養ソースのハイブリッドであったりします。

2020 年には、代替タンパク質の世界市場は 28 億米ドルと推定されています。1最新の数値は、2029 年までに 366 億米ドルに達すると予測されており、2022 ~2029 年の間に予想されている CARG は 12.4 % です。2

市場に影響を与える消費者の行動

食料品店でカートンを調べている 2 人の女性の写真

カーギルによる世界的な FATitudesTM 調査の最新結果では、消費者の 55 % が持続可能な食品を購入する可能性の高いことが強調されています。3 この調査によると、参加したほとんどの国で、「持続可能な調達」や「天然資源の保全」などの項目が、「フェアトレード」や「パッケージの削減」の選択などの他の考慮項目よりも優先されることが示されています。3

代替タンパク質食品や飲料製品は、購入の際に気候変動、動物の権利、人間の幸福などの要因を優先する消費者に対して、より持続可能な選択肢として販売されています。

食品市場に影響を与える可能性のある既知の消費者行動には、次のものがあります。

アイコン

環境の持続可能性:

気候変動の一因となる、肉や乳製品の生産に必要な畜産や農業からの温室効果ガス(GHG)排出量を制限します。国連は、世界の畜産が GHG 排出量の 14.5 % を占めていることに注目しています。4 これは運輸による排出量を上回っています。5 さらに 2021 年の調査で、家畜の飼料だけでなく、食料源として動物(牛や豚など)を使用していることが、食料生産による全排出量の 57 % の原因となっていることがわかりました。一方で、植物由来の食品の栽培によるものはわずか 29 % であることが明らかになっています。6 逆に、森林破壊に限ってその原因のいくつかを調べみると、大豆生産などの非肉製品の農業も、消費者市場に対する食品および飲料メーカーからの需要が高いため、ある程度、気候変動の原因になっていることが報告されています。7

アイコン

健康と福祉

消費者の多くは、肉ベースの製品に含まれる動物用医薬品、ホルモン、その他の汚染物質を懸念しており、代替タンパク質ベースの製品がより健康的な選択肢であると感じて、代わりに購入する傾向があります。さらに、肉、特に加工肉や赤身の肉を頻繁かつ定期的に消費することと、特定の病気のリスクが増加することを関連付ける科学的研究に基づいて、一部の消費者は、そのような製品の消費を意識的に減らす努力をしています。8,9

アイコン

食品安全の確保と食品偽装の防止

利益のみを追求する不正な食品・飲料取り扱い業者のために、正直な製造業者が自分たちの製品の正確な内容を保証することが難しい場合があります.これは食品・飲料業界に広がっている問題であり、加工肉製品も例外ではありません。消費者は正確な製品表示を信じる以外ありません。2013 年の馬肉スキャンダルのような事例は、普段肉をよく食べる人たちに、代替タンパク質製品の方を食べようと思わせた可能性があります。


持続可能で多様な食料源

食品サプライチェーンのグローバル化は、多くの国で大勢の自国民が栄養を摂るのに輸入食品に依存しているため、システムを脆弱化させます。過去 2 年半にわたって、新型コロナウィルスのパンデミックや最近のウクライナでの紛争など、特定の世界的な出来事が世界の食品サプライチェーン内のさまざまな地域で混乱を引き起こし、取引価格や食料の確保に影響を与えました。

このような要因により、国内供給を確保するために特定の輸出食品を制限する国も出てきています。これは、純輸入国である他の国、特に経済的に発展途上の国に悪影響を及ぼすおそれがあります。

棚に置かれた乾物の瓶の写真

純食料輸入国は可能であれば、地域の食料安全保障を強化するために投資しています。例えば、シンガポールは現在、食料の約 90 % を輸入していますが、2030 年までに必要な栄養の 30 % を地元で生産するという目標(「 30 by 30 」目標)を掲げて、現地での食料生産を増やしています。10A*STAR のシンガポール食品バイオテクノロジーイノベーション研究所(SIFBI)など、地方政府が資金を提供する研究開発プログラムで、国の目標の達成を目指し、代替タンパク質の供給源として細胞を増殖させるアニマルフリー技術を開発しています。10

現在、持続可能で多様な食料源を生み出すために、代替タンパク質市場への最大の投資のいくつかは北米から行われています。例えば、発酵ベースの代替タンパク質製造企業の 40 % 以上が米国を拠点としており、次にヨーロッパの 28 %、イスラエルの 17 % が続きます。11

代替タンパク質市場における世界的に注目される投資

アメリカ国旗

2010 年から 2021 年の間、アメリカを拠点とする企業が、設備投資の面で代替タンパク質市場全体を支配してきました。例えば、Beyond Meat、Nature's Fynd、Perfect Day などの企業が、植物ベースおよび発酵ベースの代替タンパク質に数億ドルの投資を行っています。12

イスラエル国旗

2021 年上半期から 2022 年下半期にかけて、イスラエルの代替タンパク質産業は 160 % の成長を記録しました。13 イスラエルの今年最大の投資の 1 つは、Redefined Meat と呼ばれる地元の新興企業からのものでした。Redefined Meat は、3D プリントされた植物ベースの製品のメーカーです。この会社は 1 億 3,500 万ドルを投資して、イスラエルとオランダでの生産に資金を投じ、よりグローバルなレストランパートナーシップの機会を模索しています。14

オランダ国旗

オランダ政府は最近、ヨーロッパで先導的な役割を果たす活動として、培養肉を生産する地元の細胞農業に 6,000 万ユーロの投資を発表しました。15 政府はまた、学界および NPO ・民間企業の 12 の組織で構成される Cellular Agriculture Netherlands と呼ばれる新しいコンソーシアムによって資金を確保し、今後数年間で代替タンパク質分野に 2 億 5,200 万から 3 億 8,200 万ユーロの投資を行う追加計画を明らかにしています。15

食品・飲料業界の取り組み

食料安全保障、食料の入手可能性、気候変動に対する懸念の高まりが、世界の多くの地域での代替タンパク質の受け入れや採用に徐々に繋がっています。しかし新しい製品は、食品の安全性の問題を含む潜在的な課題に直面する可能性があります。一部の市場では、代替タンパク質の需要がかなり急増しましたが、供給が不足して食品偽装につながっています。食品アレルゲンとして認識されている小麦や大豆などの一部の商品が、より高価な植物ベースのタンパク質の代わりに使用される可能性があります。他のタイプの一般的な食品偽装には、隠蔽および偽造、ミスラベリングなどがあります。

食品中の代替タンパク質試験:事例紹介

食品および飲料業界向けに設計されたアジレントのワークフローソリューションは、消費者市場向けの信頼性および栄養情報・安全性を検証するために、代替タンパク質製品をテストするワンストップショップです。

ある研究では、アジレントの LC-Q-TOF-MS/MS 技術(6550 iFunnel Q-TOF LC/MS デバイスと組み合わせた 1290 Infinity シリーズ液体クロマトグラフ)を用いて、調理済みビーフバーガーの製造で代用品肉として使用される特定の非肉タンパク質およびペプチドマーカーの調査が行われました。16

ある科学者チームが実施した研究では、Agilent 7890 ガスクロマトグラフ(GC)システムを Agilent 5977 GC/MSD と組み合わせて使用することで、一般的な植物性の代替肉と、類似した栄養プロファイルを持つ牧草で育てられた牛ひき肉の化学的プロファイルの違いを明らかにする、ノンターゲット GC/MS ベースのメタボロミクスアプローチを紹介しています。

さらに、新しい培養肉製品や植物性タンパク質の元素分析が、原子分光分析によって実現できることが研究により示されています。消費者市場向けの植物ベースおよび細胞ベースの代替タンパク質製品の製造プロセスにより、一部の元素金属がスーパーマーケットの棚に並ぶ予定の最終製品に交差汚染する可能性があります。7850 誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)などのアジレントの原子分光分析装置を使用すれば、エンドユーザーは代替タンパク質製品サンプル中の目的の金属元素を同定して定量化できるようになります。(→技術資料:「ICP-MS 用の EAM 4.7 メソッドに従った代替肉中の重金属および微量元素の測定」日本語版)

細胞ベースの食品の開発を検討している企業にとって、バイオリアクター内のタンパク質とアミノ酸のフィールドを最適化することも重要ですが、いつ、どの段階で反応を一時停止するかを知ることも重要です。このアプリケーションノートでは、Agilent Infinity II Prime オンライン LC を使用してバイオリアクターから自動オンラインサンプリングを行い、アミノ酸や有機酸などの成長パラメータを調べて反応速度を解析し、リアクターでのタンパク質収量を最適化します。

ラボをサポートする堅牢性テストツール

食品および飲料業界向けの代替タンパク質の研究の推進は、間違いなく私たちのグローバル食品サプライチェーンに影響を与え、私たちの食品の未来を形成することにつながります。お客様のラボが細胞肉または植物性の代替肉をテストしているかどうかにかかわらず、堅牢性のテストを実施する目的には、ICP-MS、トリプル四重極(QQQ)液体・ガスクロマトグラフィー質量分析(LC/GC/MS)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などの技術が専門家により推奨されています。


代替タンパク質の分析を支える装置をご覧ください。

関連資料:
植物由来代替物のGC/MS ベースでのメタボロミクスおよびLC/Q-TOF ノンターゲットケモメトリックスプロファイリング:ワークフローと消耗品ガイド

◆ 食品関連のアプリケーション事例集:一覧はこちらから