ルーチン GC/MS 分析中にマトリックスなどのイオン源の汚れが MS イオン源に蓄積することは避けられません。その結果、オペレータはイオン源を定期的に取り外して、レンズなどのイオン源の部品を洗浄した後、イオン源を元どおりに戻し、ポンプを止めて機器を再キャリブレーションする必要がありました。アジレントの特許技術、Agilent JetClean セルフクリーニングイオン源は、アジレントのシングルおよびトリプル四重極 GC/MS システムでのイオン源の手作業 (マニュアル) によるクリーニングの必要性を大幅に削減することができます。
Agilent JetClean (図 1) は高い精度で洗浄ガスの流量を制御して、水素の力でイオン源をクリーニングします。JetClean によりラボでは、レスポンスを数か月間または数年間維持できるため、煩雑で人件費のかかるマニュアルのイオン源クリーニングの頻度を下げることができます。この結果、ラボの生産性と収益性を高めることができます。JetClean は Agilent シングル四重極およびトリプル四重極 GC/MS システムに、新規の場合はオプションとして、既存の場合はアプグレードとしてご提供いたします。
Agilent JetClean には 2 種類の動作モードがあります。オフラインでイオン源を洗浄する「クリーニングのみ」モードでは、洗浄ガスを流さずに測定が行われます。水素が存在することにより発生するスペクトルの変化が生じないため、測定される分析対象物が水素と相互に作用する場合や化学イオン化 (CI) を使用する場合に適した動作モードです。このモードでは測定の合間に洗浄ガスをイオン源に自動的に導入して堆積した汚染物質を取り除きます。
オンラインでデータ採取をしながら洗浄をする「データ採取とクリーニング」モードでは、微量の洗浄ガスが連続的にイオン源に供給されます。この動作モードはきわめてシンプルかつ効率的ですが、分析対象物が水素と相互に作用する可能性があるため、アプリケーション的に検証された EI 分析にのみ適用できます。
JetClean セルフクリーニングイオン源は多くのアプリケーションでその有用性が証明されています。Journal of Chromatography A の記事(英語・有料)では、多環芳香族炭化水素 (PAH) 分析での第 1 世代のセルフクリーニングイオン源の有用性が紹介されています。この研究ではさまざまな濃度 (1 ~ 10,000 pg/µL) の 62 種類の PAH を測定し、R2 の値が 0.998 を超える優れた直線性を得ました。QC サンプルを数か月の調査期間にわたってモニターされ、真値の 5 % 以内に収まり、また平均検出下限 (LOD) が 1.02 +/- 0.82 pg/µL できわめて低いことが示されました。
分析対象物が食品中の農薬の場合、Agilent JetClean セルフクリーニングイオン源は手作業でのクリーニングの必要性を 80 % 以上低減しました。食品サンプルは、多くのマトリクスを含む果物、野菜、シリアル、お茶のサンプルでした。サンプルは QuEChERS 抽出で前処理した後、シンプルな PSA (1 級-2 級アミン) と MgSO4 でクリーンアップしました。超微量分析 (1 ~ 250 ppb レベル) では 160 種類以上の農薬のトリプル四重極 GC/MS の測定が必要でした。図 3 は、標準の場合と JetClean セルフクリーニングイオン源の場合をイオン源のクリーニングの必要性について比較し、JetClean イオン源による手作業でのクリーニングの必要性が飛躍的に削減したことを示しています。
2016年6月にテキサス州サンアントニオで開催された米国質量分析学会 (ASMS) で掲示されたポスターでは、JetClean セルフクリーニングイオン源によって、次のように堅牢性が向上した他の分析例が示されていました。
Agilent JetClean セルフクリーニングイオン源は手作業でのクリーニング頻度を低減するため、生産性と収益性の向上に直結します。JetClean セルフクリーニングイオン源はアジレントのシングル四重極およびトリプル四重極 GC/MS システムのオプションおよびアップグレードとして導入をすることができます。
マニュアルの GC/MS のイオン源のクリーニングの不便さを減らしてラボの生産性を高める Agilent JetClean セルフクリーニングイオン源の詳細についてぜひご検討ください。
本製品は一般的な実験用途での使用を想定しており、医薬品医療機器等法に基づく登録を行っておりません。その他の目的にはご利用になれません。