医薬品における溶出物および浸出物 (E&L) 分析に対する必要性が高まっています。本記事では、薬品容器のキャップからの溶出可能化合物の検出と同定を行うメソッドについて取り上げます。
医薬品の溶出物および浸出物の調査には、4 つの重要なステップがあります。まず、製剤と薬品容器および剤形との間に発生し得る相互作用のリスク評価から開始します。この例では、薬物を血流に直接提供するすべての液剤について調べました。高分解能の Agilent 6530 Accurate-Mass Q-TOF LC/MS と、データマイニングソフトウェアとして Agilent MassHunter Mass Profiler を使用しました。
2 番目のステップでは、最悪の状況を作り出し、すべての溶出可能化合物の量を測定するために、極端な条件によるコンプリヘンシブ抽出プロトコルを検討します。次の段階では、抽出された化合物ごとの毒性評価を実施します。すべての遺伝毒性化合物または構造活性相関 (SAR) について 1 日当たり 0.15 µg である化合物の、1 日当たりの最大取り込み量を調べました。他のすべての化合物は、1 日当たり 5 µg を超える濃度で定量できることが必要です。最後に、ワークフローの分析要件を判断するために、医薬品の日ごとの取り込み量に基づいて、化合物ごとに AET (分析評価閾値;Analytical Evaluation Threshold) を計算します。
この分析では、化合物のレポートを作成する必要があり、それらの構造を 1 ppm の濃度でデータベースにより暫定的に確認する必要があります。20 ppm を超える濃度で検出された場合は完全な化合物の同定が必要になります。0.1 ppm から少なくとも 100 ppm まで、濃度の半定量が必要です。しかしながら、これは外部のリファレンス化合物を使用した定量では困難である可能性があります。
図 1. リスク評価閾値レベルに関連した濃度で、容器施栓系に存在する可能性のある、さまざまな既知および未知の有機/無機化合物を検出するための一般的な溶出物/浸出物用ワークフロー。
図 2. Agilent Mass Profiler ソフトウェア (Rev 7.0) を使用した差分解析。ルーチン QA/QC の PCA プロット (上の図)、実験群と対照群の差分プロット (下の図)。
図 3. 高分解能の MS および PCDL 研究による化合物の同定の例。
この調査の目的は、リスク評価閾値のレベルに関連した濃度で密封した容器内(容器施栓系)に存在する可能性のある、さまざまな既知および未知の有機/無機化合物を検出することです。アジレントは、ICP-MS から高分解能 Q-TOF LC/MS までを含む非常に包括的な機器のポートフォリオと、信頼性の高い結果が得られるデータマイニングのソフトウェアを組み合わせた最適なソリューションを提供します。図 1 に、一般的なワークフローを示します。
参考文献に基づいて、 9 つの異なる典型的な可塑剤を含むシステム適合性テスト用混合物を使用して、一般的な測定用のメソッドを開発し、機器の LOD/LOQ (検出限界/定量下限) レベルを確認しました。
それらの抽出物は、Agilent Jet Stream エレクトロスプレーイオン源を使用して、ポジティブイオン化モードとネガティブイオン化モードで測定しました。データを得られた Agilent MassHunter Mass Profiler ソフトウェア (Rev 7.0) を使用して差分解析によるデータマイニング (比較分析) を行いました。ブランク溶液との差分解析により、サンプル抽出物中のさまざまな化合物のリストが得られました (図 2)。プラスチックから溶出して検出された化合物は、 1,800化合物以上の化合物を収録したパーソナル化合物データライブラリ (PCDL) を用いて同定しました (図 3)。
薬品容器中の溶出物および浸出物を同定するLC/MS ワークフローは以下のとおりです。
ICP-MS および ICP-OES による元素分析や、プラスチック製点滴静注バッグ、経皮パッチ、およびジェネリック製剤の GC/MSD 分析を用いた新しい ICH メソッドおよび USP メソッドを使用する応用例を、アジレントのウェブサイトで紹介しています。
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