初期対応職員やテロ対策職員が対処するインシデントの数は、世界中で増加の一途を辿っています。こうしたチームが直面する重要な問題の 1 つは、現場で発見された未知化合物質の同定作業です。このような物質はすべて、近くにいる人々や一般の人々を脅威に晒す危険性があります。危険が拡大する前に、短時間で正確に同定することがきわめて重要になります。

最前線で作業に当たるチームの例として、こぼれた化学物質や「白色の粉末」に関するインシデントを処理する危険物取扱班、秘密工場の所在を特定する麻薬物質取り締まり班、公共の場で不審物に対応する爆発物処理班、荷物に規制対象物質が含まれていないか検査する税関職員などが挙げられます。


ハンドヘルドによる化学物質の同定

未知化合物の同定には、日常的に多数の技術が用いられています。危険物の取り扱い、保安、テロ対策のアプリケーションでは、10 年以上にわたってハンドヘルド型ラマン分光分析システムが広く用いられてきました。従来の製品で未知化合物を同定できるのは、対象物を直接視認できる場合や、物質が薄手の透明ボトルやプラスチック製バッグに入れられている場合に限られます。ただし、これらの機器の検出範囲は限られており、サンプルの入れ物が厚手で、不透明または色付きの場合は同定することができません。サンプルを収集するには、容器から取り出す必要がありますが、そのために作業効率が低下し、作業者や公共の場が危険物質に晒されるリスクが高まります。

不透明な容器を開封せず危険物質を同定

図 1.危険物取扱班が黄色のパーム油容器の内容物を同定する様子 図 1. 危険物取扱班が黄色のパーム油容器の内容物を同定する様子

アジレントメンバーとなった Cobalt Light Systems は、2016 年 3 月にハンドヘルド型ラマンシステム Resolve を発表しました。Resolve には、新世代技術の空間オフセットラマン分光法 (SORS) が採用されています。この技術により、色付プラスチック、黒ガラス、紙、カード、包装材料、袋、布地など、未開封の不透明な容器に入れられている危険かつ違法の未知化合物を同定できます。SORS を使用することで、初期対応職員が対処できる実サンプルの幅が大きく広がります。Resolve システムは、爆発物、毒性工業化学物質、化学兵器剤、麻薬性物質、最新の向精神薬などが登録されている包括的なライブラリから物質を同定します。例として、TATP (昨今の多数のテロ攻撃で使用されている高感度爆発物) やフェンタニル (モルヒネの数百倍から数千倍も効き目が強い合成オピオイド) があります。

図 2.多層のプラスチックを通してパッケージの内容物を同定する様子 図 2. 多層のプラスチックを通してパッケージの内容物を同定する様子

Resolve 独自の機能を利用すれば、パッケージの保全性を一切損なうことなく、容器の内容物を同定することができます。物質の同定は即座に完了し、未知化合物が遊離するリスクはありません。高感度と考えられる物質 (爆発物など) に影響を与えず証拠を保全でき、「危険区域」で (防護服を着用した)初期対応職員が時間を効率的に使えます。

Resolve はすでに世界中の危険物処理、税関検査、捜査、保安、テロ対策と取り締まり、さらには軍事用途 (CBRN、EOD、および IED 対策(1)) に採用されています。

参考

(1) CBRN (化学、生物、放射性物質、核)、EOD (爆発物処理)、IED (即席爆発装置)


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