ケーススタディ :マルチオミクスが切り拓く科学研究の未来

Núria Canela 博士
コーディネーター
Center for Omic Sciences
Universitat Rovira i Virgili
タラゴナ、スペイン

アジレントテクノロジーは、研究センターの
マルチオミクス手法導入を支援

Núria Canela 博士は、初期の研究で、がんと創薬研究に着目していました。博士は、幅広い科学的専門分野や分析技法について経験を重ねましたが、やがてそれぞれの分野には限界があることに気づきました。

そこで 2008 年、博士はスペインのタラゴナにある Universitat Rovira i Virgili に加わりました。

Canela 博士は次のように述べています。「そこで、Center for Omic Sciences の設立をすることにしました。私は適切なときに適切な場所にいたのです。」

2013 年に設立されたこのセンターには、アジレントの幅広い機器とソフトウェアソリューションが導入されており、システム生物学を専門分野としています。つまり、ゲノミクス、トランスクリプトミクス、プロテオミクス、およびメタボロミクスを組み合わせた分野です。

「研究を開始したとき、私は 1 つのターゲットに着目していました。新しい阻害剤は、CDK やサイクリンなどのターゲットに結合しています。しかし、私は次のように考えました。ここで大きな一歩を踏み出すためには、1 つのタンパク質だけではなく、全体の系に着目する必要がある。」と Canela 博士は述べています。

博士がコーディネートしているこのセンターでは、まさに自分が成し遂げたいこと、つまり視野を広げるということが実現可能でした。

続いて、博士は次のように述べています。「我々は現在、栄養と健康に着目して研究を行っています。ただし、可能な範囲のすべてのオミクスプラットフォームを適用するという観点からです。我々は異なる技術から得たさまざまな情報を関連付けることにより、現在研究中の生物系に関してより現実的な全体像を得ることができます。さらに、この知識を最終的な全体像に結び付けることにより、特定の表現型で表現または活性化されるパスウェイを解明しています。」

なかでも特別な関心を持っているのが、腸内に存在するバクテリア、菌類、および酵母の多様な集合体である微生物です。

「我々は、肥満、メタボリック症候群、炎症性疾患などのいくつかの疾患や日常の食事の変化に関連する、微生物の組成と機能性の影響を調査しています。」と Canela 博士は述べています。

これは非常に困難な研究です。

Canela 博士は続けます。「微生物の中でも、混合されている多数の異なる微生物を分析するため、それぞれを同定することが問題になります。」

まだ名前も付けられていない微生物が多数存在しています。

「まず、メタゲノミクス手法により、微生物の多様性について記述する必要があります。」と Canela 博士は述べています。「存在する可能性のある種の一覧を作成する際には、データベースを構築し、これらの種のプロテオームを組み立てます。次に、独自のプロテオームデータベースを構築して、メタプロテオミクスおよびメタボロミクス分析を実施します。」

サンプル中のすべての遺伝子、タンパク質、および代謝物を完全に網羅するというこれらの研究を非常に困難にしているのが「メタ」特性です。

「つまり、1 つの変化を観察するだけではなく、パターンについても観察する必要があるのです。」と Canela 博士は述べています。

言い換えれば、これら異なるすべての分子がどのように相互に作用しているのかということです。1 つ (または、2 つ、3 つ) の分子が増加すれば、別の分子が減少するのか。例えば、人間の日常の食事に新しい食品や食品原材料を添加すると、基本栄養量を上回る有益な効果が得られるのかどうかは、このようなパターンによって示すことができ、この点はセンターにおける研究のもう 1 つの特徴です。

Canela 博士によると、センターの作業負荷は学界と業界の両方に対して 50/50 の割合で分析サービスを提供するように分割されており、また独自の研究プロジェクトも開発中です。博士が誇りにしているのは、博士がセンターに加わってからちょうど 1 年後に、スペインの経済競争力省が Center for Omic Sciences と、バルセロナにある補完的な Center for Genomic Analysis を科学および技術に関する優れた拠点であると評価したことです。

センターには、アジレントのガスおよび液体クロマトグラフ質量分析計、さらに液体処理ロボットバイオアナライザマイクロアレイスキャナが備えられており、オミクスデータを統合してパスウェイ分析を実施するための関連ソフトウェア、つまり Agilent MassHunter Mass Profiler ProfessionalGeneSpring も用意されています。

「重要なパートナーであるアジレントは、我々の手法に最適な、さまざまなオミクス科学向けのソリューションを提供しています。」と Canela 博士は述べています。「これらのシステムでは、さまざまな手法から得られた結果を簡単に解釈して統合できるため、非常に便利です。」

博士によると、センターでは独自の新しいツールと手法も開発中です。

「現在は主に新しい GC/MS、LC/MS、および NMR 手法の他に、代謝物の同定にも着目しています。我々は、これらの手法を研究とサービスの両方に導入している最中です。」

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