Harvey Millar, Ph.D. Director of the Australian Research Council's Centre of Excellence in Plant Energy Biology |
農作物の効率的な収穫に関する研究を支援するアジレントのソリューション現在、Harvey Millar 氏とそのチームを始めとする植物生物学者にとっては、困難な課題が存在しています。つまり、世界はこれ以上大きくならないにもかかわらず、現時点での人口は 70 億人で、2050 年までには 95 億人に達すると予測されています。このため、環境が変化した際にも、十分な農作物を栽培し、これらの人々すべてに行き渡るようにするにはどうすればよいのか、ということが問題になってきます。 「大局的観点から問題になるのは、効率化という点です。」と、Australian Research Council Centre of Excellence で植物エネルギー生物学を指導する Millar 氏は述べています。「植物栽培の効率化をどうすればよいのか、ということです。」 Millar 氏とパースにいる共同研究者は、アジレントのガスクロマトグラフ質量分析計、および液体クロマトグラフ質量分析計、さらに高度なインフォマティクスソフトウェア技術を使用して、この問題に取り組んでいます。 植物は、何百万年間かの進化を経れば、ほぼ可能な限り効率的になるはずである、と考える人がいるかもしれません。ただし、この一連の考え方では、農業の関わりというものが考慮されていません。 「我々が栽培している農作物はごく少数ですが、それを世界中で栽培しています。」と Millar 氏は指摘します。「ただし、これらの農作物は、我々が栽培している環境によってもたらされたものではありません。農作物は、数百年の間、そこでずっと成長を続けてきただけなのです。そして、我々はこれらの農作物が新しい環境に適応するまで、何百万年かの間待ってもよいし、プロセスの高速化に取り組んでもよいのです。」 Millar 氏にとって、アジレントというパートナーと共同で作業を行うことのメリットは、同社が分析技術分野での能力を高めるため、絶えず懸命に努力している企業であるということです。「我々には生物学的な目的があり、アジレントにはエンジニアリング/分析における目的があります。我々は共に同じ方向へ進んでいます。」と氏は述べています。「植物は、逃げることも隠れることもできません。このため、自分自身がこれからたどる道を、だいたいにおいて受け入れなければならないのです。このように、異なる条件下でも生き残ることができるという点において、植物は非常に柔軟性があると言えます。」と Millar 氏は述べています。「私のチームは、植物のエネルギー代謝、植物がさまざまな活動を行うために使用している栄養分、さらに環境が変化した際に植物が自分自身を調節する仕組みに注目して、研究を続けています。」 科学者達は長い間、植物が生成するタンパク質に注目してきました。しかし、Millar 氏のチームはアジレントの技術を採用することにより、最近になってやっと、タンパク質の年齢、つまり置き換えられる頻度を判別できるようになりました。「現時点で、この成果は我々の研究において最も興味深いことのうちの 1 つです。次は、植物が体内のタンパク質構造を置き換える際のエネルギーコストについて理解しようと努めています。」と Millar 氏は述べています。 Millar 氏によると、チームの第一目標は、代謝のパスウェイを発見することです。これにより、植物を丈夫にし、その生産高を増加させるように変更することが可能になります。「代謝に関する問題は、これが多数のフィードバックループを持っており、非常に複雑であるという点です。しかし、我々はすでに興味深いパスウェイをいくつか発見しており、現在は、いくつかの企業と共同で作業を行い、このパスウェイを栽培作物に導入して、現場で実験している最中です。」と Millar 氏は述べています。 Millar 氏は、ラボで実施する改変作業は条件がすべて管理下にあり、現場での実験においては細分化する必要があると認識しています。「大きな課題として、現場での設定のばらつきが挙げられます。」と Millar 氏は述べています。「ラボで理解したメカニズムは、植物の実生活では想像していたより重要ではないことが判明したのです。」 とは言うものの、Millar 氏の国際チームが植物の代謝に関して挙げた成果、具体的には、植物が塩分を輸送する仕組みについては、デュラム小麦 (パスタを作成する際に使用されることが多いため、マカロニ小麦とも呼ばれています) の改良を含む、オーストラリア全体の研究に重要な知見を提供しました。 「我々は、小麦の近縁野生種で発見された遺伝子に、輸送体に関する指示が含まれていることを認識していました。これは、ある決まったタイプの細胞で発見されているのが重要な点です。このタイプの細胞に輸送体を組み込むことができれば、塩分を締め出す現象について知ることができます。この現象は実際に自然界から学んだことでした。次はこれをツールとして利用し、他の植物を操作することも可能になります。」と Millar 氏は説明しています。 これらの改変により、オーストラリアのような塩分の存在する環境においても、デュラム小麦の生産高が 25 % 増加しました。現在、Millar 氏のチームは小麦の乾燥耐性と温度許容度を向上させるために、科学の知識を通して新しい手がかりを発見すべく研究を続けています。 増加を続ける世界の人々、特にパスタやパンの愛好者にとっては、本当に素晴らしいニュースです。 |
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