広範なアジレントのマルチオミクスソリューションが エクスポソーム研究をサポート

Anthony Macherone, Ph.D.
Agilent Senior Scientist
Visiting Scientist, Johns Hopkins University School of Medicine

環境からの化学物質の曝露に対する分析は、単一の曝露物質と単一の影響を評価するボトムアップ型アプローチから、複雑な探索アプローチへ移行しつつあります。生涯にわたって暴露する複数の物質が人間の健康にどの程度影響するかを判別するのは簡単ではありませんが、アジレントの分析機器とソフトウェアを組み合わせれば、この追跡評価を可能にする強力なツールになります。

個人が生涯にわたり暴露する外部および内部化学物質の生体内での蓄積によって、疾患が増加します。

図 1. 個人が生涯にわたり暴露する外部および内部化学物質の生体内での蓄積によって、疾患が増加します。(図を拡大)

個人が生涯にわたり暴露する外部および内部化学物質の生体内での蓄積によって、疾患が増加します。

図 1. 個人が生涯にわたり暴露する外部および内部化学物質の生体内での蓄積によって、疾患が増加します。

エクスポソームは生涯の曝露を網羅する

エクスポソームの枠組みは、ノンターゲット分析による関連バイオマーカーの特定と、ターゲット分析による疾患バイオマーカーと暴露物質の評価を統合します。また、曝露物質、遺伝的特徴、および健康状態の間の因果関係を特定します。エクスポソームは、受胎以降の化学物質曝露の総量を表します。

エクスポソームを解明するには、生涯にわたって暴露する外因性および内因性の物質と、人を疾患にかかりやすくする限定的な危険因子について、同定や特性解析、および定量する必要があります。エクスポソームの概念は、ヒトゲノムのアイデアを補完するものです。ヒトゲノムの解読により疾患の根底にある遺伝的原因の理解は深まりましたが、遺伝子解析で説明できるのは疾患の一部のみでした。

先天的要因および後天的要因を同時に考慮

環境要因とライフスタイル要因は、人の疾患のかかりやすさ、発症、悪化を判断する際に、遺伝的要因と同程度か、あるいはそれ以上に重要です。エクスポソーム研究は、複雑に交錯する遺伝子と環境の間の相互作用と、それらと疾患との因果関係を理解するための概念的な枠組みを提供します。エクスポソームは、先天的要因と後的要因のジレンマを全面的に見直して、人間の疾患について全体像を見渡すことを促します。DNA配列、エピジェネティックなDNA修飾、遺伝子発現、代謝物プロファイリング、環境的要素、これらすべてが組み合わさって、疾患の表現型に影響を与える環境要因との間の複雑かつ動的な相互作用で疾患が定義されます。

エクスポソームのパラダイムによって人間の疾患の原因または疾患を悪化させる複雑な相互作用を解明するには、さまざまな生物学的次元における多様な危険因子と修飾因子の間の関連性を評価する必要があります。この相互作用は、外部のストレス要因に対する人間の感受性を定義します。

エクスポソームのパラダイムは、ゲノムワイド関連研究 (GWAS) での遺伝子的原因の探求と同様に、慢性疾患の非遺伝的原因の研究の動機づけとなります。人間のエクスポソームについて説明するには、環境と曝露の化学および工学、生化学、分子生物学、毒物学、バイオインフォマティクス、および疫学といった、多彩な最新技術が必要です。これらの技法は、特定のワークフローに整理され、疾患の環境面の原因に関してさらに知見を得られるようになっています。

アジレントは、このような複雑な相互作用を研究するためのマルチオミクスプラットフォームを提供します。

アジレントの曝露生物学のソリューションは以下の要素を含むマルチオミクスプラットフォームから成ります。

  1. マイクロアレイ分析およびプロテオミクスを使用したゲノム全体とターゲット型のトランスクリプトミクス。
  2. 確立された堅牢なサンプル前処理プロトコルと最新世代の機器を使用する メタボロミクスワークフローのアプリケーションを通じた血液エクスポソームの測定および特性解析。最新の機器には、超高速液体クロマトグラフィー (UHPLC)、質量分析 (LC/MS)、GC/MS分析、および誘導結合プラズマ質量分析などがあります。

以下の様な段階的な処理を示します。

  1. 全エクスポソーム関連研究 (EWAS) を使用した、仮説ではなくデータに基づく分析によって、罹患モデルと健康モデルにおいて有意な差を示した化学物質を特定します。
  2. 重要な化学物質を特定したら、的を絞ったフォローアップ研究で、それらのバイオマーカーにバリデーションを実行します。
  3. 他の「オミクス」解析 (トランスクリプトミクスおよびプロテオミクスを含む) によって提供される追加的な証拠や、エピジェネティック情報を使用して、推定バイオマーカーが裏付けられます。
エクスポソームの特性解析では、2 段階のアプローチが必要です。まず、仮定に基づかないノンターゲット探索によって、できるだけ多くの化学的特徴を収集します。次に、対象を絞ったフォローアップ研究において、推定マーカーのバリデーションとアノテーション付けを実行します。

図 2. エクスポソームの特性解析では、2 段階のアプローチが必要です。まず、仮定に基づかないノンターゲット探索によって、できるだけ多くの化学的特徴を収集します。次に、対象を絞ったフォローアップ研究において、推定マーカーのバリデーションとアノテーション付けを実行します。(図を拡大)

エクスポソームの特性解析では、2 段階のアプローチが必要です。まず、仮定に基づかないノンターゲット探索によって、できるだけ多くの化学的特徴を収集します。次に、対象を絞ったフォローアップ研究において、推定マーカーのバリデーションとアノテーション付けを実行します。

図 2. エクスポソームの特性解析では、2 段階のアプローチが必要です。
まず、仮定に基づかないノンターゲット探索によって、できるだけ多くの化学的特徴を収集します。
次に、対象を絞ったフォローアップ研究において、推定マーカーのバリデーションとアノテーション付けを実行します。

アジレントでは、関連するデータセットの統合をサポートするための曝露生物学モデルを構築しています。基礎となる主要なプラットフォームとして、Agilent GeneSpring ソフトウェア (Agilent Mass Profiler Professional を含む) を使用します。このモデルでは、以下の機能を提供します。

  1. 曝露と反応の関係の解明 (生化学的疫学)
  2. 曝露源と人間のカイネティクスの同定 (曝露生物学)
  3. 作用のメカニズム (システム生物学)

単純な相関関係だけでなく疾患の真の原因を突き止める

健康上のストレス要因やリスク変異因子との単純な関連付けを行うのではなく、疾患の因果関係を調査するには、撹乱されたホメオスタシスに関連するすべての中間事象に関してメカニズムを理解する必要があります。撹乱を同定するには、システム生物学モデルと 高度なバイオインフォマティクスによってサポートされる、ハイスループットのデータ取り込みおよび解析が必要です。これらのツールを使用して、健康被害に関連する実際の生体および代謝のパスウェイと、先天的な防御メカニズムによって効率的に克服される撹乱とを区別することができます。

エクスポソームの特性解析と定量のために、この 2 段階の分析アプローチを用いると、疾患の原因要素を下流の疾患バイオマーカーと区別できます。

図 3. エクスポソームの特性解析と定量のために、この 2 段階の分析アプローチを用いると、疾患の原因要素を下流の疾患バイオマーカーと区別できます。(図を拡大)

エクスポソームの特性解析と定量のために、この 2 段階の分析アプローチを用いると、疾患の原因要素を下流の疾患バイオマーカーと区別できます。

図 3. エクスポソームの特性解析と定量のために、この 2 段階の分析アプローチを用いると、
疾患の原因要素を下流の疾患バイオマーカーと区別できます。

エクスポソームのパラダイムによって、環境健康科学と化学的リスク評価においてまったく新しい時代への道が開かれています。複雑な疾患の複数の原因の関連付けを理解できるように、ハイスループットの分析ツール、ビッグデータ分析、および生物学から発想を得たモデリングがまとめられています。

LC/MSGC/MS分光分析およびリモート (「スマート」) センサーなどのその他の技術が、見込みのある大規模コホートにおけるエクスポソームの特性分析を実現し、曝露とリスクの関係について信頼できる情報を提供します。エクスポソームの研究から得られた結果により、教育、行動、およびポリシーベースのリスク軽減措置に反映させることが容易になります。

エクスポソームは、広範囲にわたる高度なツールを必要とする複合的な研究領域です。アジレントではこのマルチオミクス研究向けに、ハードウェア、ソフトウェア、およびインフォマティクスソリューションを幅広く用意しています。アジレントは、世界でトップレベルのシステムやソフトウェア、部品を提供するだけではありません。エクスポソームを解明するために適用可能なIntegrated Biologyの充実したラインナップをご確認ください。