カリフォルニア大学デービス校の Fiehn 博士のチームは、最先端の質量分析計と最新鋭のガスおよび液体クロマトグラフィーシステムなどアジレント製品を組み合わせて使用し、答えを見つけています。 |
「私達のラボは、代謝を包括的な尺度で解明することに取り組んでいます。インフォマティックスツールを開発し、新しい分離方法と質量分析法を応用して生物系内で何が起こっているかを大局的に理解します。最終目標は 2 つあります」 と Fiehn 博士は述べます。1 つは自然のメカニズムを理解することです。
もう 1 つは、その知識を初期診断テストに反映させ、人のさまざまな疾患を診断することです。
「アジレント装置をはじめ、GC/MS および LC/MS システムなどの質量分析計は感度が非常に向上しています。生化学の研究に応用できるような兆候を捉えることができるため、今後 2 年間または 2 か月以内に誰が心臓発作を起こすかといった予測が可能になるでしょう」
Fiehn 氏は、自分達の研究がいつの日か早期診断および精度の高い診断につながるものと考えています。
可能な限り多くの質量スペクトルデータを収集し、科学界が利用できるデータベースに入力することによって基盤作りをしています。このデータベースは、政府資金による研究では無料、Fiehn-Agilent GC/MS ライブラリのような企業資金による研究では有料で利用されることになります。
「研究を成功させるための唯一の方法は、血漿などのサンプル中に見つかるあらゆるものの複雑さを理解することです。バイオマーカは 1 つだけではありません。ある種類の癌を明確に示す 1 つの分子はありません。むしろ、重要になるのはパターンであり、パターン認識が要求されます」 |
「昨年、私達は LipidBlast を発行しました。これは、複合脂質と中性脂肪の 200,000 個の質量スペクトルのデータベースで、29 種類の脂質クラスを表します」 と述べています。
しかし、Fiehn 博士は、これは単にスタートでにすぎない、と言います。
「一次代謝があります。これは、多数の種で共通して見られる糖、アミノ酸、ヒドロキシ酸などです。小分子の実際の多様性は、過多のテルペノイド、脂質、フラボノイド、フェノール誘導型化合物に由来し、あまりにも大量で多様です。そのため、どのラボも、どのライブラリも、すべてを網羅することはできていません」
「そのために、スペクトルを予測する必要があります。本当に自然を理解しようとするならば、質量スペクトルの予測を可能にしなくてはなりません。それは、私達が科学界全体を巻き込んで始めた数年がかりの取り組みです。アジレントをはじめとする企業が私達の取り組みをサポートしてくれていることに感謝しています」
この予測のために、科学者は既存のデータと物理学の第一原理を利用します。
「特定の分子がどのように断片化するかが分かると、化学的骨格をコンピュータで作成できます。このアシル鎖のかわりにより長いアシル鎖があること、この分子ではなくこの分子のメチル化変異体があることを考えてみましょう。認識できるイオンおよび存在度の観点から、それが質量スペクトルにどのような影響をおよぼすでしょうか。既知の化合物の質量スペクトルを多く持っていればいるほど、このモデル構築はより適切なものになります」 と、Fiehn 博士は語っています。
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