Stem Cell Vol. 3 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||
long non coding RNA の研究で
Non coding RNA の中でも 200 塩基以上の lncRNA (long non coding RNA) は近年様々な生物種・組織で多様な働きを持つことが報告されています。 例えば HOTAIR (HOX transcript antisense RNA) は乳がんにおいて発現が高く、その発現量と生存率に相関があるといわれています(1)。また、幹細胞においても lncRNA が重要な役割を持つことが徐々に明らかになってきており、lincRNA-RoR (long intergenic non coding RNA、regulation of reprogramming) が多能性の維持に関わることが示されています(2)。さらに Wang et al. は lincRNA-RoR が ceRNA (competing endogenous RNA) として機能し、 miRNA (microRNA) による NANOG 等の多能性遺伝子の分解を防いでいることを報告しています(3)。 一方、lncRNA の機能解析に向けて lncRNA を対象としたノックダウン方法も確立されており、Guttman et al. はマウス幹細胞において、shRNA (short hairpin RNA) を利用して 147 種の lncRNA をノックダウンし、その発現変化をアジレントマイクロアレイを用いて観察しました(4)。その結果、lncRNA は多能性に関わる転写因子の直接のターゲットであること、分化にも lncRNA が関わることが報告されました。 また Shi-Yan et al. は lncRNA を搭載したアジレントの遺伝子発現カスタムマイクロアレイなどを用いて、多能性維持あるいは神経分化に必要な lncRNA を絞り込んだのち、siRNA (small interfering RNA) により機能の確認を行っています(5)。Ghosal et al. は幹細胞において報告された数々の lncRNA をまとめ、その分子機構を紹介しています(6)。また lncRNA は組織特異的に発現することがわかっていますが、 最近では分化を促進する lncRNA が臓器特異的に発現していることが報告され(7)、下記テーブルのような lncRNA が分化に関わることが報告されています。 このように lncRNA は幹細胞において重要な役割を果たすことが報告されており、その研究にアジレントの遺伝子発現マイクロアレイが活用されています。 |
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RNA-seq によるトランスクリプトームの検出 |
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一方で近年、トランスクリプトの解析には RNA-seq が用いられることが多くなりました。しかし RNA-seq は実験操作が煩雑であることやノーマライゼーション方法が確立されていない等の課題があります。また lncRNA は一般的に発現量が mRNA よりも低いといわれており、 lncRNA の検出にはある程度のリード数が必要です。例えば Nature Reviews では低発現遺伝子を含め正確に定量するには、80 million mapped reads は必要と見積もっています(12)。また Encode ガイドライン(Standards、Guidelines and Best Practices for RNA-Seq:2010/2011)では低発現転写産物あるいは新規転写産物の検出を行う場合、76 bp 以上のペアエンドシーケンスで 100 ~ 200 million リードの読み取り、ならびにバイオロジカルレプリケートを 2 つ以上行うことが推奨されています。
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アジレント遺伝子発現マイクロアレイによる mRNA/lncRNA の解析 |
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Long non coding RNA のデータベース |
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この様に lncRNA の重要性が明らかにされるに伴い、近年データベースが構築され始めました。これらデータベースはマイクロアレイデータの他、deep depth で取得した RNA-seq のデータで構築されているものもあります (10、13)。アジレントではこれらのうち Human lincRNA catalog の情報を元にしたマイクロアレイをご用意しています (SurePrint G3 Human 遺伝子発現マイクロアレイ 8 x 60 K ver.2.0、2015 年 2 月現在)。また LNCipedia の情報を元に作成したアジレントのカスタムアレイを使用して解析を行った例もあります(14)。
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