ケーススタディ : 隠された未知脂質の探求 - Zhi-Hong Jiang 博士

Zhi-Hong Jiang 博士

マカオ科学技術大学副学長、教授
マカオ医薬健康応用研究所所長

細胞内の重要な生体成分の解明を支援する
アジレントのソリューション

スフィンゴ脂質はすべての動植物の細胞内に存在します。

しかし、存在はしていても、多くの場合見つけることができません。

生物学的に重要なこの種はとても低濃度で、豊富に存在する他の脂質(たとえば、グリセリド) に紛れてあたかも姿を隠しているようです。

「ルーチン分析で使う機器では、微量の生理活性スフィンゴ脂質は検出できません」と、マカオ医薬健康応用研究所を指揮する Jiang Zhi-Hong 氏は話します。

生理活性スフィンゴ脂質は微量で見つけ難いものの、生命にとって極めて重要であると Jiang Zhi-Hong 氏は指摘します。

「細胞の生物学的機能で重要な役割を果たすため、他の脂質よりもより重要と考えられています」

生物学的機能として、薬剤耐性と密接に関係のある機能もあれば、アルツハイマー病やパーキンソン病などと密接に関係する機能もあります。

「我々の研究の目標は、より多くのスフィンゴ脂質を発見することです。人間の細胞に潜むこの成分を、より正確かつ包括的に分析したいと思っています」

 

多くの課題を抱えながらも、Jiang Zhi-Hong 氏のチームは、アジレントの最先端の機器と優れた分析ソフトウェアを使用して、それらを克服してきました。

細胞内の生理活性スフィンゴ脂質は微量ですが、種類は多様です。

「スフィンゴ脂質には、さまざまな異性体と相同体があります。異性体を分離できなければスフィンゴ脂質を定量化できず、その構造を特定することもできません」

このため、Jiang 氏と共同研究者は、確度を向上させる方法および「生物学的に重要であるのに微量しか存在せず、極めて多様なスフィンゴ脂質の構造を明確に特定する」方法を探し始めました。

最終的に見つけ出したソリューションは、超高性能なクロマトグラフィー分離と四重極飛行時間型およびトリプル四重極質量分析法との組み合わせでした。

Jiang Zhi-Hong 氏と共同研究者は大きな影響力を持つ論文誌「Analytical Chemistry」に次のように書いています。

「我々の方法を使うと、潜在的に重要でありながら微量の SPL の複数のグループを簡単かつ明確に特定することができます。通常これらの SPL は同位体/異性体的な種によって覆われているため、大部分は見落とされています」

実際に、アジレントの専門家の協力のもとに、サンプル前処理法を改善し、質量分析法パラメータを最適化した、極めて効率の良い手法が生み出されました。

その結果、86 種類の個別のスフィンゴ脂質が 1 回の実行で測定できました。この数は PC12 細胞で特定された数として最多です。

「アジレントの液体クロマトグラフィー/質量分析の機器とソフトウェアは極めて有益で、アジレントの MassHunter ソフトウェアはスフィンゴ脂質のデータベースを確立するうえで非常に役立ちました。このソフトウェアの定性分析機能により、スフィンゴ脂質を迅速かつ正確に同定することもできました」と Jiang Zhi-Hong 氏は話します。

「この強力なソフトウェアと分析器の優れた検出性能によって、微量のスフィンゴ脂質を正確に検出し、同定し定量化するという目標を達成できました」

これまでに検出されなかった種類のスフィンゴ脂質も検出することができました。

Jiang 氏のチームは、「Analytical Chemistry」に掲載された論文で、この改善された検証済みの手法によって研究者は信頼性の高いデータを得ることができ、これが重要なバイオマーカーの発見につながることになると指摘したうえで、次のように述べています。

「向上したリピドミクス測定法は、信頼性の高い診断を確実にするための標準臨床ツールとなっていくことでしょう」

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参考資料

Jing-Rong Wang, Hongyang Zhang, Lee Fong Yau, Jia-Ning Mi, Stephanie Lee, Kim Chung Lee, Ping Hu, Liang Liu, and Zhi-Hong Jiang.  ; Improved Sphingolipidomic Approach Based on Ultra-High Performance Liquid Chromatography and Multiple Mass Spectrometries with Application to Cellular Neurotoxicity.
Anal. Chem., 2014, 86 (12), pp 5688–5696.