ケーススタディ : 完璧な食品 - Carlito Lebrilla 博士

Carlito Lebrilla 博士

カリフォルニア大学デービス校
分析化学教授

母乳の秘密解明に取り組む研究者を支援する
アジレントのソリューション

「母乳の何が子どもにとって有益なのか?」
きわめて単純に思えるこの疑問について、カリフォルニアの研究者が調査しています。
「我々の最終目標は、完璧な食品のモデルとして母乳を使用することです」とカリフォルニア大学デービス校で分析化学の教授を務める Carlito Lebrilla 氏は話します。

栄養分は母乳の有益性のほんの一部に過ぎません。

Lebrilla 氏は次のように語ります。「母乳の成分の一部は確かに乳児にとっての食料ですが、多くの成分が乳児の腸内微生物叢を確立しています。良いバクテリアを育て、悪いバクテリアから防御して、過剰反応のないように免疫システムを訓練するのです」

Lebrilla 氏のチームは、アジレントの分析技術を使用して母乳の成分を分析し、その多岐にわたる機能について理解を深めています。この研究には広範な利点、特に衛生環境の悪い地域で育つ子どもにとって利点があると、彼らは考えています。


「我々は、バングラデシュ、ガンビア、ペルーなどの地域で研究のためにサンプルを集めてくれる世界中の人々と協力しています。また、国立衛生研究所とビル & メリンダ・ゲイツ財団が主導する大規模プロジェクトに参加しています」

 

衛生環境の悪い地域の子ども達は腸疾患になることが多く、このために発達が阻害され、やせ衰えます。

「そこで我々はこうした子ども達の母親の母乳を集め、正常に成長する子ども達とその母親の母乳に見られる、単に子どもに栄養を与えるだけでなく子ども達を保護するような母乳の力の特定に取り組んでいます」

Lebrilla 氏のチームが 2005 年に研究を開始したとき、グリコシル化、つまりグリカンがタンパク質に結びついてさまざまな重要な化合物を作るプロセスついてはほとんど知られておらず、利用できるツールもほとんどありませんでした。

 

「これらの化合物の分離方法が、特にクリティカルな課題でした。化合物は、化学的な観点からは同じように見えますが、生物学的な観点からは全く違っています。そこで、その構造を厳密に調べるためにアジレントの協力を求めたのです」と Lebrilla 氏は述べます。


「アジレントは我々のためにいくつかのカスタムチップを開発しました。現在も我々はそれらを使用しており、販売もされています。
このチップを飛行時間型あるいは Q-TOF 質量分析計と組み合わせて使用すると、化合物を非常に効率よく分離することができます。今では、母乳の構造を確認し、血液、尿、大便の中に追跡して定量化することもできます。これが可能になったことで、我々の研究領域は大幅に広がりました」

Lebrilla 氏は、チームの研究が影響力を持ち始めていると考えています。

「人の母乳に勝るものを開発することは難しいでしょう。しかし、我々が研究している成分を複製しようとする研究者もすでに存在します。問題は合成が難しいことで、こうした研究者は類似の代替成分を捜そうとしています」

事実、Lebrilla 氏と共同研究者が取り組んでいる研究は、Evolve Biosystems という会社を誕生させました。このベンチャー企業は最近、アーリーステージを成功裏に終えたところです。

「幼児のための腸内有益菌の開発は、微生物叢に関する子どもの治療方法、および赤ちゃんの健康全体にどのように作用するかに影響を与える可能性があります」と Lebrilla 氏は語ります。

「多くの研究者が極めて難解な学術研究を地道に進めています。この研究が近い将来応用されるようになればこれに勝る喜びはありません」

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参考資料

Ruhaak LR, Stroble C, Underwood MA, Lebrilla CB.  ; Detection of milk oligosaccharides in plasma of infants.
Anal Bioanal Chem. 2014 Sep;406(24):5775-84

Huang J, Lee H, Zivkovic AM, Smilowitz JT, Rivera N, German JB, Lebrilla CB. ; Glycomic analysis of high density lipoprotein shows a highly sialylated particle.
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Song T, Ozcan S, Becker A, Lebrilla CB. ; In-depth method for the characterization of glycosylation in manufactured recombinant monoclonal antibody drugs.
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Guerrero A, Dallas DC, Contreras S, Chee S, Parker EA, Sun X, Dimapasoc L, Barile D, German JB, Lebrilla CB. ; Mechanistic Peptidomics: Factors that Dictate the Specificity on the Formation of Endogenous Peptides in Human Milk.
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Hong Q, Ruhaak LR, Totten SM, Smilowitz JT, German JB, Lebrilla CB. ; Label-free absolute quantitation of oligosaccharides using multiple reaction monitoring.
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