トリプル四重極 GC/MS は高マトリクス中の微量ターゲット成分を高感度で検出できる装置です。高感度測定のためには、
MS 部分の最適化を行った上で、GC/MS 全体の最適化を行うことが必要です。
Agilent 7000 シリーズトリプル四重極 GC/MS では、MassHunter ソフトウェアによって、簡単にこれらの最適化を行うことができます。
1. MRM 測定の原理とトランジション作成ツール (MS部分の最適化)
MRM は Multiple Reaction Monitoring (多重反応モニタリング) の略で、トリプル四重極 GC/MS を用いた定量分析法です。
特定質量をもつイオン (プリカーサーイオン) を通過させる質量フィルター (Q1)とガス衝突誘起開裂 (CID : collision
induced dissociation) によって生じる断片を通過させる質量フィルター (Q3) の組み合わせ (MRM トランジション) を設定し、
この2つの質量フィルターを通過できるイオンを検出することで、高マトリクス中 (例えば食品など) に含まれる微量のターゲット成分
(例えば残留農薬など)を特異的に定量する方法です。
MRMではQ1、コリジョン、Q2 の各設定を最適化する必要がありますが、対象の化合物が増えると、
MRM トランジション最適化を行うのは容易ではありません。
アジレントの MassHunter ソフトウェアでは、この煩雑なコリジョン電圧などの MRM トランジションの
最適化を自動で行い、測定メソッドに簡単に設定することができます。
2. Intelligent MRMによるメソッド自動作成(GC/MSシステム全体の最適化)
最適化された MRM トランジションから測定メドッドを自動で作成するツールが Intelligent MRM です。
Intelligent MRM の特長は以下の通りです。
Intelligent MRM は、アジレントのリテンションタイムロッキング (RTL) を組み合わせて使用することで、さらに威力を発揮します。トリプル四重極 GC/MS の MS/MS の選択性によって、対象化合物の質量分析計での選択性が向上していますが、化合物のリテンションタイムが正しく設定されていて化合物がそのリテンションタイムに質量分析計にカラムから溶出することが、測定結果の信頼性を確保する上で重要となります。
アジレントのガスクロマトグラフは、第5世代 EPC によって、0.001ps i精度での高精度圧力・流量制御技術を実現しており、安定したリテンションタイムのデータが得られます。そのため、複数のシステム間であっても RTL が行えるアジレントの GC、GC/MS であればターゲット化合物を同じリテンションタイムに固定 (ロック) することができます。
マトリクスが多いサンプル中の微量の成分の検出においても、MS/MS による MRM の選択性だけでなく、ロックされた GC のリテンションタイムによって、測定 結果に確信を持つことができ、再測定の必要性を大幅に減らせます。
RTL で必要なのは測定対象化合物のうちの一つです。RTL のためにわざわざリテンションタイム補正用のキャリブレーション化合物を追加でサンプルにスパイクしたり、測定したりする必要はありません。
ラボのオペレーティングコストを削減しつつ、確信を持てる技術、それがアジレントのトリプル四重極 GC/MS をサポートする Intelligent MRM と RTL です。