新しいラボ用ソフトウェアプラットフォームを導入する際の問題点の 1 つは、以前のプラットフォームで得られた既存のメソッド、データ、分析結果の移行です。数世代前のソフトウェアバージョンで既存のメソッドを作成し、ソフトウェアの新バージョンが出るごとに、そうしたメソッドを「徐々に」移行してきたユーザーにとっては、新プラットフォームへの切り替えは特に厄介です。
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スムーズな移行の鍵は互換性
アジレントは、MassHunter プラットフォームの開発時にそうした問題点を認識し、Agilent MSD Productivity ChemStation と MassHunter の互換性をできるかぎり保ち、移行をスムーズなものにするために、あらゆる措置をとってきました。特に重視したのが、データ取込メソッドの分野です。(先月の記事[1] でも触れたように、MassHunter の GC/MSD バージョンには MSD ChemStation データ解析モード が含まれています)
アジレントがそうした問題点にどう対処したかを見ていく前に、まずは「下位互換性」と「上位互換性」という用語を定義させてください。どちらもよく使われる言葉で、ソフトウェアが旧バージョンまたは新バージョンのシステムや他のソフトウェアとどのように情報をやりとりするかを説明するものですが、この 2 つはしばしば誤用されます。
上位互換性とは、新しいバージョンの Agilent GC/MS ソフトウェアで、古いバージョンで作成したメソッドやデータ、分析結果を開いたり使用したりできることを意味します。[2] たとえば、MSD Productivity ChemStation で作成したデータ取込メソッドは、GC/MSD MassHunter Acquisition で使用できるため、GC/MSD MassHunter Acquisition はデータ取込メソッドという点で「上位互換性」があるということになります。
それに対して、下位互換性とは、古いバージョンの Agilent GC/MS ソフトウェアで、新しいバージョンで作成したメソッドやデータ、分析結果を開いたり使用したりできることを意味します。[3] たとえば、GC/MSD MassHunter Acquisition で採取した GC/MSD データは、MSD Productivity ChemStation で開いたり閲覧したりすることができるため、MSD Productivity ChemStation は GC/MSD MassHunter Acquisition のデータと「下位互換性」があるということになります。
メソッド、レポート、データの完全性を維持
Agilent GC/MSD 用 MassHunter のリリースにあたっては、MSD Productivity ChemStation から MassHunter へプラットフォームを移行する場合でも、最新ソフトウェアの導入によりラボ環境に負荷がかかることがないように、あらゆる措置がとられました。ソフトウェアのおもな要素に関する下位互換性および上位互換性について、以下で説明しています。
表 1 では、ラボ内でのデータ、分析結果、メソッドの継続的な完全性を確保するために、メソッドやデータなどの一般的なシステム移行要素について、MSD Productivity ChemStation から MassHunter へ移行する際の概要を示しています。
|
MSD Productivity |
MSD ChemStation |
MassHunter Quantitative |
MassHunter Qualitative |
MSD Productivity ChemStation E.02.02 SP1 |
||||
データ取込メソッド |
-- |
✓ |
n/a |
n/a |
データ解析 メソッド |
-- |
✓ |
T |
x |
データ |
-- |
✓ |
T |
T |
分析結果 |
-- |
✓ |
x |
× |
GC/ MSD MassHunter Acquisition B.07.00+ |
||||
データ取込メソッド |
× |
✓ |
n/a |
n/a |
データ解析メソッド |
CS |
-- |
-- |
-- |
データ |
✓ |
✓ |
✓ |
✓ |
分析結果 |
CS |
CS |
Quant のみ |
Qual のみ |
T – 変換が必要
CS – ChemStation 間のみ
* バージョン B.07.00 以降
** バージョン F.01.00 以降
*** 変換ツールは、GC/MS および LC/MS 用のすべての MassHunter に付属します。
表 1.システム移行の互換性
Bibliography