ヘリウムガスの価格高騰や不安定な供給を機に、GC、GC/MS の代替キャリアガスとして水素を使用するまたは検討されるケースが増えています。水素は、水の電気分解により製造することができ、脱炭素社会実現に向けた次世代エネルギーの一つであり、代替キャリアガスとしては最適な分離を行える 線速度域が広く、コスト意識の高い欧米ではすでに多くのユーザーが水素をキャリアガスとして用いており、分析の高速化による生産性向上と、分析コストの低減を実現しています。
一方で、水素は可燃性ガスであり爆発しやすいため、取り扱いには注意が必要です。ガス供給源、ガスを導入する分析機器および途中配管を含めた使用環境、機器操作等を含め、使用者責任において細心の注意を払って取り扱う必要があります。
- Safety Shutdown:
水素が設定圧力にならない場合、EPC バルブおよびヒーターがシャットダウン
- Flow Limiting Frit:
EPC バルブがオープン状態で不具合をおこしても、Inlet Frit により流量が制限
- Oven ON/OFF Sequence:
オーブンヒーターが ON になる前に、オーブンファンによりオーブン内を排気
- Explosion Test:
万が一、水素が GC オーブン内で爆発しても、ドアや構造体が飛び散らない設計
- Method Translation:
簡単に水素キャリアの分析条件に変換できる、メソッドトランスレーションソフトウエアを提供可能
- 水素センサ:
オーブン内で水素リークが検知された際にシステムをシャットダウンするオプションのセンサ
- HydroInert イオン源:
水素キャリアガス専用のEI イオン源。5977 シリーズおよび 7000 シリーズに搭載可能
GC、GC/MS 用試料導入装置である 8697、7697A ヘッドスペースサンプラは、サンプルループ方式を採用しており、キャリガスとバイアル加圧ガスで異なるガスの使用が容易です。水素も、正しい取り扱いをすることで HSS-GC/MS システムのキャリアガスとして使用可能になります。常にサンプルラインをパージしているバイアル加圧ガスには水素は使用できません。
より安全に水素ガスをお取り扱いいただくために:
- ガスリークディテクタ:
ハンディタイプのリークディテクタは、水素ガス供給源、集中配管、継ぎ手、分析機器、カラム接続部など、リークしやすい箇所の日常点検に便利です。
※デモ品の貸出しも受け付けています。
- 水素ガス発生装置の利用:
水の電気分解により水素を得ているため、停電時には水素発生が停止するうえ、ガスボンベと比較して水素の貯蔵量が格段に少ないという利点もあります。
(弊社での取り扱いはありませんが、担当営業にお問い合わせください。)
- 水素検知器の設置:
水素センサーをラボの天井等に設置しておくことにより、警報を出したり、水素ガス供給源を遮断したりすることで、引火爆発のリスクを低減できます。
(弊社では、室内設置型などの水素検知器の取扱いはありませんが、 担当営業にお問い合わせください。)
注意:
- 水素ガスは、各機器の取扱説明書に従い、正しく取り扱ってください。
- 化合物によっては水素ガスにより還元され、MSスペクトルや感度が変化することがあります。
参考資料:GC 研究懇談会 第323 回 GC 研究会 (2013 年 2 月 22 日 開催)での講演資料
- 弊社分析計はいわゆる 「防爆構造」ではありません。したがって、爆発可能性のある雰囲気での使用はできません。水素キャリアの使用は、キャリアガス排気・スプリットベントなど全排気が確実に室外放散されていること、水素供給源から機器までの配管からの水素ガス漏れが無いこと、設置環境に十分な換気機能があることを前提にしています。設置環境に爆発限界を超えたガスが滞留した場合、弊社機器以外も点火源となり得ます。