新規バイオマーカーの探索、遺伝子発現制御過程の解明に / miRNA マイクロアレイ

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マイクロRNA (miRNA) は、ターゲットとなる mRNA の発現を制御する小分子ノンコーディング RNA で、遺伝子発現・発生・細胞増殖・分化・アポトーシスなど、様々な細胞機能で重要な役割を果たすことが知られています。またヒト疾患において、miRNA の発現パターンをバイオマーカーとして利用することに注目が集まっています。

アジレントの miRNA マイクロアレイは、独自のプローブデザインとバイアスの少ないダイレクトラベル化法により、低発現から高発現まで広いダイナミックレンジに渡って mature な miRNA を網羅的に検出するパワフルなツールです。(技術詳細


(図について)
Micro-RNAs associated with metastasis in uveal melanoma identified by multiplexed microarray profiling. Melanoma Research. 2008 18:184-190.

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miRNAマイクロアレイ
 
  • カタログアレイ

    Human/Mouse/Rat の 3つの生物種で、最新の miRBase18. 0(2012年7月時点) のコンテンツに対応して
    バージョンアップした製品をラインナップ。

  • カスタムアレイ

    Web ベースのカスタムアレイデザインツール、eArray には、miRBase に 登録された全ての miRNA に対応する
    デザイン済みプローブを登録。カタログアレイにない生物種でも、条件に合うプローブを選択するだけで
    簡単にカスタムアレイを作成可能。

miRNAマイクロアレイ用試薬
 
RNAの品質確認ツール
 

miRNA は mRNA と異なり、分解を受けて RIN 値が低くなった状態の total RNA からでも、正確な発現解析が可能であると考えられています。
ですが発現解析前の品質確認は、結果の解釈に重要であり、バイオアナライザ RNA キットを用いた Quality Check は標準的に行われています。

  • バイオアナライザ RNA ソリューション

    RNA測定用に3つのキットをご用意しています。
    - RNA 6000 Nano キット : total RNA や mRNA の品質評価に
    - RNA 6000 Pico キット : 微量な total RNA や mRNA の品質評価に
    - Small RNA キット : small RNA 領域 (6-150nt) の分析に

バイオアナライザ 6000 nano キットもしくは pico キットで total RNA を分析し、RIN (RNA Integrity Number) で RNA の分解度合いを評価することが
出来ます。Total RNA 中の small RNA の領域をより分解能よく解析したい場合、オプションとして small RNA キットを利用することが出来ます。

より詳細なキットの使い分けについてはこちらをご覧下さい。

よくいただくご質問
 

【Q.】 miRNA マイクロアレイ用のサンプルに small RNA キットを使用できますか?

【A.】 Small RNA キットだけでは、RNA の分解度合いの評価は出来ません。

miRNA マイクロアレイのサンプルであっても、rRNA などを含む total RNA をバイオアナライザ 6000 nano キットもしくは pico キットで分析し、RIN (RNA Integrity Number) で全体の分解度合いを評価することをお勧めします。RNA が分解を受けている場合、電気泳動では分解物も低分子 RNA として検出されてしまうため、small RNA キットだけでは内在性のsmall RNA を検出しているのか分解による RNA 断片なのかを区別することが出来ないためです。

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 参考文献 : "Direct and Sensitive miRNA Profiling From Low Input Total RNA" 
 (Wang et al)  RNA (2007) 13(1):151-59.
MatureなmiRNAのみを選択的に検出するプローブデザイン
 

アジレントの miRNA マイクロアレイのプローブは、高い配列選択性・サイズ選択性により、配列の類似した相同 miRNA や、同一の配列を持つ長い前駆体と区別して、mature な miRNA のみをハイブリダイゼーションさせる工夫がなされています。
それぞれのプローブは、検出したい miRNA と相補的な配列を持つ部分 (Hybridization Sequence) と、その 5'側に分子内で二次構造を形成するヘアピン部分から成ります。Hybridization Sequence は、ハイブリする miRNA の全長ではなく、3'側の一部と相補鎖形成する配列を持ちます。この Hybridization Sequence の長さを最適化することにより、CG 含量の異なる miRNA でも一定の実験条件で高いハイブリ効率を得ることが出来ます。
またキャップ構造を形成したヘアピン部分が立体障害となり、同一配列を持つがより長い前駆体がハイブリするのを防ぎます。

バイアスの少ないダイレクトエンドラベル化法
 

Complete labeling and hyb kit を用いたラベル化法では、検出したい miRNA の 3'端に一分子の蛍光標識された Cytidine を付加します。
PCR や逆転写などを利用しないため、塩基配列による効率の違いが少なく、バイアスのないラベル化結果が高効率に得られます。

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FFPE
 

このアプリケーションノートでは、Agilent miRNA マイクロアレイを用いたワークフローを使えば、ホルマリン固定パラフィン包埋 (FFPE) サンプルから新鮮凍結 (FF) サンプルと同等の結果を得られることが示されています。
右図では、FF サンプルと FFPE サンプルの miRNA マイクロアレイデータの相関を示しています。正常な大腸の FF サンプルおよび腫瘍 FF サンプルのマイクロアレイデータに対して、同様の FFPE サンプルセットのデータをプロットしています。この図では、発現レベルに強い相関性が示されています。R2値は正常サンプルで 0.953、腫瘍サンプルで 0.948 でした。こうした結果は、FFPE サンプルを使用しても、Agilent miRNA マイクロアレイを用いたワークフローを使えば、信頼性と再現性の高い結果が得られることを示しています。最適化されたプローブと 5 桁の直線ダイナミックレンジを備えたアジレントのマイクロアレイは、幅広いサンプルにおいて、感度の高い miRNA発現のプロファイリングを可能にします。

Exosome
 

エキソソームは細胞間コミュニケーションにおいて主要な役割を果たしており、中でも体液中に含まれる細胞外小胞エクソソームに含まれるマイクロ RNA (miRNA) は、生体内の RNase による分解を免れ、細胞から細胞へ運搬されていることから、疾患の進行のメカニズム解明やバイオマーカーとして役立てられないか探索が進められています。

■アプリケーションノート

 アジレント miRNA マイクロアレイおよびバイオアナライザを用いた exosomal miRNA の検出

筆者らは、市販のキットで抽出した健常人血清中のエクソソーム由来 RNA の分析を、バイオアナライザ、リアルタイム PCR、Agilent Human miRNA マイクロアレイで分析しました。GeneSpring GX などを用いた解析により、同一抽出キットを用いた場合に同一人物由来 RNA のデータが再現性良く取得されたことが示されました。また、抽出キットによるデータの違いも示されました。

 アジレントmiRNAマイクロアレイを用いたexosomal miRNAの発現差解析

このアプリケーションノートでは、マイクロアレイでの解析に必要な血清量の検証を行い、さらに市販の肺癌患者および健常者の血清からエクソソーム由来RNAを抽出しマイクロアレイでの発現差解析を行いました。その結果、血清量に応じてマイクロアレイのシグナル強度が変化すること、バイオロジカルな発現差解析が可能なことなどが示されました。

論文情報

論文報告では、miRNA がエキソソームに包まれ RNA 分解から守られており、循環している血漿や血清から常に検出されることが示されています。筆者らは、様々な培養がん細胞サンプルのエキソソーム、細胞、培地から RNA を抽出し、Agilent Human miRNA マイクロアレイにてプロファイリングを行い、GeneSpring GX によりデータ解析を行った結果を報告しました(癌の高転移株ではエキソソームを介して let-7 miRNA family が細胞外に分泌され、自己の腫瘍形成能を維持している可能性があります)

Biomarker
 

本研究では、化学物質を誘発したラットの肝発がんをモデルとして、様々なタイプの発がん物質によって誘導されたラット肝の血清から miRNA プロファイルデータが取得されました。具体的には、フェノバルビタールと DDT による構成的アンドロスタン受容体を介した肝発がん、およびクロフィブラートによるペルオキシソーム増殖因子活性化受容体 αを介した肝発がんをモデルとして選択し、Agilent Rat miRNA マイクロアレイを用いて、Agilent 実験プロトコルに従ってアレイデータを取得し、75パーセンタイルのシグナル正規化が行われました。さらに、2つの独立したサンプルセット (26週または 36週のラットサンプル) で比較的小さな CV値を示す 4つの miRNA (miR-16、25、146a、221) で Per miRNA ノーラマライズが施され、Welch の t検定を行い発現差解析が実施されました。qRT-PCR バリデーションの結果、肝発がんの進行に伴い、いくつかの血液循環性miRNA (let-7a、let-7f、miR-34a、miR-98、miR-331、miR-338 および miR-652) の発現量が緩やかに増加することが明らかとなりました。さらに、特に let-7a、let-7f、および miR-98 の発現量の増加が、非常に初期の段階のラットの血清で統計学的に有意であることが示されています。今後、初期癌の重要な臨床モニタリングツールとして、血液循環性の miRNA が用いられることが期待されます。

その他の論文
 
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