ゲノミクス - 注目論文リスト アーカイブ (SureSelect)

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注目論文リスト 
SureSelect
“Mitochondrial disease genetic diagnostics: optimized whole-exome analysis for all MitoCarta nuclear genes and the mitochondrial genome.” Discov Med. 2012
[23272691]
SureSelect : ミトコンドリア病は、ミトコンドリアゲノムにコードされた遺伝子の変異の他に、核ゲノムにコードされミトコンドリアに局在するタンパクの変異が原因となることが知られています。筆者らはこうしたミトコンドリア病の原因となる可能性の高い遺伝子に加え、新規の原因遺伝子の発見も同時に可能にするデザインとして、ミトコンドリアゲノムおよび高いカバレッジが必要な 16 の MitoCarta 核ゲノム遺伝子をターゲットとしたプローブを、SureSelect Human All Exon 50Mb キットに加えた SureSelect カスタムライブラリを作成しました。
核ゲノム(エクソン)プローブとミトコンドリアゲノムプローブの混合比率を検討し、HiSeq2000 の 1 レーンに 1 サンプルで Sequencing を行った場合、100:1 の混合比率において、全エクソンの 97.5% で 10x 以上のカバレッジが得られ、かつミトコンドリアゲノムの 99.8% で 1000X 以上のカバレッジが得られることを確認しました。MitoCarta 遺伝子や GeneDx の Mito101 Mitochondrial Disease Nuclear GenePanel の遺伝子が十分なカバレッジで解析可能なこと、また全エクソンのカバレッジも損なわれないことがあわせて確認されました。
ミトコンドリア遺伝子の解析では、低いレベルのヘテロプラスミーを検出するために非常に高いカバレッジが必要となります。
最適化されたターゲットキャプチャと NGS を組み合わせた本法により、従来のサンガーシーケンス法では検出できなかった 8% のヘテロプラスミーでもミトコンドリア DNA の変異を検出できる可能性が示されました。

なお、本製品は、Agilent Human All Exon V5 + 16 MitoCarta + mtDNA のデザインとしてアーリーアクセスで販売しています。

“Transforming mutations of RAC guanosine triphosphatases in human cancers” Proc Natl Acad Sci U S A. 2013
[1216141110]
SureSelect : KRASやHRASなどRASタンパクが突然変異の結果活性型となり、がん化を引き起こすことはよく知られていますが、RASファミリー以外の低分子量GTPaseの変異がヒト腫瘍に与える影響は、あまり報告されていませんでした。筆者らは、新しいがん治療の標的分子を効率よく探索するため、AgilentのSureSelect RNAキャプチャカスタムキットを用いて906個の候補遺伝子のcDNAをキャプチャし、Illumina Genome Analyzer IIxによって非同義突然変異をスクリーニングしました。キャプチャの結果、843の遺伝子について平均495xという高いカバレッジで目的遺伝子を解析することが可能となり、ヒト繊維肉腫細胞株においてRHOファミリー低分子GTPaseの一種であるRAC1の変異(N92I)ががん化の原因であることが、世界で初めて明らかになりました。次に筆者らは、他の腫瘍におけるRACタンパクの変異を調べるため、40種のがん細胞株から抽出したRAC1/2/3のcDNAを解析し、またCOSMICデータベースに登録されている既知の変異も含め、様々ながん種でRAC1とRAC2に複数種類の変異を生じており、これらの変異ががん化の原因となっていることを確認しました。これらの結果から、この変異体は強い発がん能力をもつ“横綱がん遺伝子”と考えられ、今まで分子標的治療法が確立していなかったがんにおいても、有効な新しい治療薬の開発が進むことが期待されます。
“Genomic islands of divergence in hybridizing Heliconius butterflies identified by large-scale targeted sequencing." Philos Trans R Soc Lond B Biol Sci. 2012
[22201164]
SureSelect : ドクチョウ属 (Heliconius) の蝶は最近起こった種の放散の代表的な 1例であり、その羽の模様の多様性は種分化と関連しています。彼らは、シーケンシングの前処理としてゲノム DNA の興味のある領域を濃縮するため Agilent の SureSelect DNA Capture カスタムキットを使用しました。4.5 Mb のゲノム参照配列からリピート配列を除いた 3.5 Mb の配列がターゲットとしてデザインされました。この技術により種内および種間の両方で、ほぼ全てのコーディング領域について高いカバレッジを、非コード領域についても集団遺伝学的解析を行うのに十分なカバレッジを得ることに成功しました。解析の結果、強い分断選択にさらされる地域である交雑帯に生息する亜種間で、集団分化の大きな領域が検出されています。
“Targeted high throughput sequencing in clinical cancer settings: formaldehyde fixed-paraffin embedded (FFPE) tumor tissues, input amount and tumor heterogeneity." BMC Med Genomics. 2011
[21958464]
SureSelect : 大量並列シーケンス技術はシーケンススループットの大幅な増加をもたらしましたが、臨床サンプルにおける再現性と適用性ならびにセッティングに関しては未だ改良が必要です。本論文では、前立腺がんにおける遺伝的多様性の検出を例に、ターゲットリシーケンシング分野での 3つの重要な問題についての取り組みがなされました。1つ目はホルマリン固定パラフィン包埋 (FFPE) 組織サンプルのおける小さなヌクレオチド多様性 (SNV) の検出、2つ目はインプットサンプルの最小量、そして 3つ目は組織不均一性を考慮したサンプリングです。実験の結果、FFPE 組織サンプルは SNV 検出について新鮮凍結サンプルを補完できることが示されました。「全エクソーム」ターゲット領域 (52 Mb) と 3.9 Mb のカスタムデザインターゲット領域を含む Agilent のSureSelect DNA Capture カスタムキットを用いた実験により、少量の DNA で濃縮均一性が高くデータのばらつきが少ない結果が報告されています。
“Compound inheritance of a low-frequency regulatory SNP and a rare null mutation in exon-junction complex subunit RBM8A causes TAR syndrome." Nat Genet. 2012
[22366785]
SureSelect : 血小板減少性橈骨欠損症(TAR症候群)は、血小板の減少と前肢にある橈骨の欠損という特徴があります。患者の大部分に染色体1q21.1に遺伝性あるいは新規(de novo)の欠失が見られますが、常染色体劣性の性質を理由付けるにはさらに他の原因アレルが必要です。その別の原因アレルは、非常に小さな欠失領域において行ったタンパク質をコードする10遺伝子(RBM8Aを含む)のシーケンシングでも特定されませんでした。その原因アレルを特定するため、ヨーロッパ人のTAR症候群患者で1q21.1に欠失がある5人を選び、エクソームの配列決定が行われました。彼らはAgilentのSureSelect Human All Exon Plus Kitを使って39.3 Mbのエクソン配列を濃縮、Illumina Genome Analyzer IIプラットフォームで配列を決定しました。1症例当たり13.1~13.5 Gbの配列が読まれ、123~127倍の平均カバレッジ、90%のターゲットは少なくとも10倍のカバレッジでした。TAR関連の遺伝子の変異は見つかりませんでしたが、4症例においてRBM8A遺伝子の5’UTRに低頻度のSNPのマイナーアレル(rs139428292)が見つかり、残りの1症例においては同じ遺伝子の最初のイントロンに未知のSNPが見つかりました。次に1q21.1に欠失がなく、5’UTRにこのSNPをもつTARの2症例についてRBM8Aの全エクソンの配列が決定されました。その結果、1つ目の症例では、第4エクソンの開始位置に4 bpの挿入によるフレームシフトが見つかり、その挿入とノンコーディングSNPが異なる染色体上にあることが分かりました。2つ目の症例では、RBM8Aの最後のエクソンでナンセンス突然変異が検出されました。この2つの変異は1000 Genome Projectの458エクソームサンプルとCohorte Lausannoise(CoLaus)の416サンプルでは認められませんでした。著者らは、ほとんどの症例において、稀なnull allele(欠失、フレームシフト変異、または未熟終止コドン)とRBM8Aの2つの低頻度ノンコーディングSNPの複合遺伝によりTAR症候群が引き起こされると結論しました。ENCODEプロジェクトの7つのヒト細胞株におけるヒストン修飾の解析により、この2つのSNPが潜在的な正の調節因子の領域に位置することも示されました。さらに、FAIRE(Formaldehyde-Assisted Isolation of Regulatory Elements)とシーケンシングを組み合わせた技術(FAIRE-Seq)によるオープンクロマチン構造の同定により、巨核細胞においてもさらなる証拠が示されています。
“Association of TALS developmental disorder with defect in minor splicing component U4atac snRNA." Science. 2011
[21474761]
SureSelect : テイビ−リンダー症候群 (Taybi-Linder syndrome; TALS) は、これまで病因不明であった稀な常染色体劣性遺伝病です。著者らは、これまで新規なホモ接合体マッピング法を用い、地中海沿岸地方の近親婚の 3家族 (F1からF3) の TALS を染色体 2q14 の 13-cM領 域 (D2S2254 から D2S2215 まで、10 Mb) にマッピングしていました。この方法は、普通、非常に限られた情報しか得られない系統学の情報よりは、個々のゲノムに基づく交配の推定に依存しています。本研究では、F1 から F3 の家族の非罹患者とモロッコの近親婚の家族 (F4) を追加し、その遺伝子型を決めて TALS のインターバルを 3.19 Mb に改善しました。F1 から F4 の TALS 患者では共通のハプロタイプは認められず、創始者効果を無視することができます。新しい 3.19 Mb の TALS インターバルに位置する候補遺伝子の古典的なサンガーシーケンスでは変異が見られませんでした。そのため、著者らは F1 から F4 の家族から選ばれた 10人について、この領域のイントロンとエクソン領域を標的とした Agilent のカスタム SureSelect を用いたハイスループットシーケンシングを行いました。その結果、1人につき、1500万以上の 75塩基の高品質リードが得られ、そのうち 75% は TALS の 3.19 Mb インターバルに特異的でした。繰り返し配列でない 1.6 Mb の領域については 100% が少なくとも 1回はキャプチャされ、平均シーケンス深度は 300x、この領域の平均シーケンス深度>30x で得られたものは 80% 以上でした。この領域では、4356塩基がリファレンスの DNA 配列と異なり、そのうちの 1つの塩基置換 (G→A) が F1 から F4 の家族で分離され、病因突然変異と推定されるあらゆる基準と一致しました。その変異は被験者でホモであり、両親でヘテロ、罹患者の 2q14 ハプロタイプを持っていない健康な血縁者にはありませんでした。ゲノムの 51 (g.51) G→A 置換は、マイナーなスプライソソームに特異的なノンコーディング RNA に転写される核内低分子 RNA (snRNA) 遺伝子 U4atac に位置します。In silico モデリングによる U4atac/U6atac の 2分子構造から、U4atac の変異は 15.5 K タンパク質との結合とそれに続く Prp31 タンパク質の結合に重要な部位を修飾すると予測されます。これらのタンパク質の結合は U4atac/U6atac.U5 の 3つの低分子核内リボヌクレオタンパク質 (snRNP) を安定化し、スプライシング活性に重要であると考察されています。カスタム設計によりイントロン領域のキャプチャも可能です。
"A de novo paradigm for mental retardation" Nature Genet. 2010
[21076407]
SureSelect : 近年、精神遅滞の患者数がヒト集団の中で高頻度に一定数維持される理由が、「ゲノム領域で起こる複数の遺伝子の新生 (de novo) 変異のためである」という、これまでの精神遅滞の遺伝学とは対立する新たな理論が浮上しています。本研究では、10人の原因不明の精神遅滞患者について、Agilent SureSelect Human All Exon Kit (V1) を用いて家族をベースとしたエクソームシーケンシングが実施されました。その結果、9つの遺伝子において、ユニークかつ非同義的な新生突然変異が同定されました。この中の 6つの変異は、6人の異なる個人の患者で同定されており、遺伝子機能、進化上の保存性及び突然変異の影響からみて、病原性を伴う可能性があります。これらのケースでは、核型は正常であり、アレイ CGH から CNV に関連した de novo 変異は検出されませんでした。今後、このようなシステマティックでゲノムワイドなシーケンス解析とアレイ解析の組み合わせにより、さまざまな精神発達障害が de novo 突然変異によって明らかにされることが期待されます。
"Frequent mutations of chromatin remodeling gene ARID1A in ovarian clear cell carcinoma." Science 2010
[20826764]
SureSelect : 卵細胞明細胞腺がんは上皮卵細胞がんの 10% を占め (日本では卵巣がんの 四分の1にも達する)、標準的な化学治療が効かない極めて厄介ながんの一つです。本研究で著者らは OCCC の遺伝学的な原因を調べるため、8人の OCCC 患者からがん細胞を免疫アフィニティ精製し、Agilent SureSelect Human All Exon Kit (約18,000 遺伝子) を用いてエクソームシーケンスを行いました。同一の患者の正常な細胞と比較した結果、少なくとも 2つ以上の腫瘍で変異していた 4遺伝子 (PIK3CA, KRAS, PPP2R1A, ARID1A)を同定し、そのうち PPP2R1A と ARID1A は卵細胞明細胞腺がんに限定される新たながん遺伝子と考察されました。分析した42例の OCCC のうち、7% が PPP2R1A に変異があり、57% が ARID1A に変異がありました。ARID1A は、クロマチンリモデリングに関わるタンパク質をコードしています。変異の性質とパターンから、ARID1A は腫瘍抑制遺伝子として働いていることが示唆されます。これらの結果から、異常なクロマチンリモデリングが OCCC の発病に寄与していることが示唆されます。今後、全エクソーム解析技術の利用拡大により、さまざまながんの点変異や InDels が同定され、変異の性質とパターンによるがん遺伝子とがん抑制遺伝子の分類則や、がんのタイプとエピジェネティクスとの関わりへの理解が進むものと期待されます。
"BRAF mutations in hairy-cell leukemia. " N Engl J Med. 2011
[21663470]
SureSelect : 有毛細胞白血病(hairy-cell leukemia、HCL)の基礎にある遺伝子異常はこれまでのところ良く分かっていませんでした。この研究では、HCL患者の末梢血から単離した白血病細胞および同一患者の正常細胞についてAgilent SureSelectを用いたヒト全エクソームの濃縮ならびに大量並列塩基配列決定が行われ、さらに47例のHCL患者でサンガー法により、結果の妥当性が検証されました。全エクソーム解析により体細胞で5種類のミスセンス変異が同定され、この中にBRAFのV600E変異タンパク質を生じさせるBRAFのヘテロ接合体変異が含まれていました。BRAF V600Eはその他の腫瘍において発がん性を示すため、その後の解析ではこの遺伝子異常に焦点が当てられました。その結果、サンガー法で検証された47例の全てのHCL患者で同じBRAFの変異が認められました。免疫組織とウエスタンブロット法による検討により、HCL細胞にリン酸化MEKおよびERK(BRAFキナーゼの下流標的タンパク質)の発現がみられたことから、HCLではRAF-MEK-ERK分裂促進因子活性化プロテインキナーゼ経路が構成的に活性化されていることが示されました。これらの知見により、今後、HCLの病因、診断、標的療法が大きく変わることが期待されます。

"De novo mutations of SETBP1 cause Schinzel-Giedion syndrome", Nature genetics 2010
[20436468]

SureSelect :最近、全エクソンシーケンシングが疾患遺伝子の同定に有効であることが示され、劣性のメンデル型疾患の遺伝的な根拠を決定した報告が始まりました。本研究では、Schinzel-Giedion 症候群が、SETBP1 遺伝子の de novo 変異によって引き起こされることが世界で初めて明らかにされています。オランダのチームは、Agilent SureSelect human All Exon kit を用いて、代表患者の gDNA のエクソン領域の濃縮を行い、次世代シーケンサ解析にて SETBP1 遺伝子の de novo 変異を見つけると共に、Sanger 法にて他の患者でも同様の変異が見られる事を確認しました。SETBP1 は、かずさ DNA 研の小原らによって発見された遺伝子ですが、彼らが開発した 「Mutation@A Glance」 に、この疾患変異が登録される日も近いでしょう。また、この論文の著者が述べているように、特定の疾患解析では今後エクソーム解析とマイクロアレイによるコピー数多型解析を組み合わせた解析が進むものと期待されます。

"PHF6 mutations in T-cell acute lymphoblastic leukemia", Nature genetics 2010
[20228800]

SureSelect and CGH :2010年新春の ”Nature News And Views” で取り上げられたように、全エクソンシーケンシングがメディカルゲノミクスに新風を起こしています。コロンビア大のチームは、X連鎖癌抑制遺伝子を同定するために Agilent SureSelect Target Enrichment System を用いて、12人の男性T細胞性急性リンパ芽球性白血病 (T-ALL) の代表患者の gDNA の X染色体エクソン領域の濃縮を行い、次世代シーケンサ解析にて PHF6 遺伝子に複数の変異を見つけると共に、さらに X染色体にフォーカスした平均解像度 3kb のアジレントカスタム CGH アレイを用いて、10倍以上の数の検体から PHF6 遺伝子を含む 100kb ~ 1Mb 程度の領域が欠失しているケースも明らかにしました。特定の疾患解析では、このように新たな癌抑制遺伝子を見出す上で、キャプチャした特定のゲノム領域のシーケンシングと多検体でのオリゴアレイ CGH の組み合わせ解析が有効となります。

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 SureSelect 論文集
(2011年7月発行)

105の論文のタイトルを収載
メンデル病 60、複雑な病気 20、
臨床研究 7、RNAキャプチャ 1、
自動化 1、その他 17

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