食品へのメラミン (プラスティックで一般に使用されている有機化合物) の混入が急速に国際的な問題になっています。メラミンは窒素含有量が高いため、食糧に添加されるとタンパク質レベルの分析が歪曲され、タンパク質量が実際よりも多く見えます。メラミンで汚染された食品の摂取は尿路結石と腎不全を引き起こすため [1]、規制機関はこの不純物の分析に対してより低レベルの検出を実現するよう求めています。アジレントは最近、メラミンの感度を大幅に高めるように米国 FDA (Food and Drug Administration) GC/MS メソッドを修正しました。改良したメソッドでは、メラミンとその類似体のスクリーニング、定量、および確認もすべて 1 回の短い分析で実行できます。
メソッド修正による感度の向上
FDA は、メラミンの最大残留限度 (MRL) を乳児用調合乳に対して 1 ppm、その他の製品に対して 2.5 ppm と設定しました。FDA GC/MS スクリーニングメソッド [2] は、メラミンとその類似体 (アンメリン、アンメリド、およびシアヌル酸) を 2.5 ppm で検出できます。ただし、2009 年 2 月に発行された FDA 輸入警報では、0.25 ppm の感度のテストメソッドが求められています。したがって、スクリーニングに FDA GC/MS メソッドは使用できなくなり、確認には新たなメソッドが必要になります。
新たな感度レベルを実現するために、FDA GC/MS メソッド [3] を、Agilent 7000A シリーズトリプル四重極 GC/MS システムと組み合わせた Agilent 7890A GC システムに修正しました。この修正では、オリジナルのサンプル抽出および誘導体化手順を使用し、15 分未満で分析できるようにバックフラッシュを採用しています。このメソッドでは、メラミンとその類似体を 0.25 ppm で検出でき、高い再現性と正確な定量が実現します。
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バックフラッシュによるサンプルスループットの向上
バックフラッシュ構成では、カラムから高沸点物質が除去されるため、ケミカルノイズを削減し、イオン源を保護しながら、分析時間を短縮できます。バックフラッシュにより、溶出の遅いピークは、カラム全体および MS に運ばれる代わりに注入口のスプリットフローベントからフラッシュされます。
バックフラッシュを実現するために、30 メートルカラムを 2 つの 15 メートルカラムで置き換え、これらを Agilent Purged Ultimate Union に接続しました。[4,5] Purged Ultimate Union (図 1) には、アジレント独自のキャピラリ・フロー・テクノロジー (CFT) が搭載されています。これはデッドボリュームを抑えた特殊なフィッティングとリークを排除するフェラルを備えた圧力制御ティーです。ニューマティクスコントロールモジュール (PCM) は、正確に制御された第 2 のガス源を提供して、カラムフローを適切なカラムまたは検出器に導入します。
図 2 に、この構成のバックフラッシュの例を示します。一番上のクロマトグラムは、6 つの標準試料を示しています。ここでは、第 3 のピークが最後の対象化合物とみなされ、第 4 のピークは溶出の遅い最初の干渉物です。中央のクロマトグラムは、バックフラッシュが 10.1 分から開始する同じ標準試料を示しています。ポイント (a) では、GC メソッドは最初のカラムの流量より減らし、ポイント (b) では第 2 のカラムの流量を増やしています。ポイント (a) から (b) までの時間は、第 2 のカラム内の最後の対象化合物の滞留時間です。このメソッドでは、最後の対象化合物を保持しますが、溶出の遅い化合物が MS に入ることはありません。一番下のクロマトグラムは、後続のブランク分析に残留がないことを示しています。
修正したメソッドでは、メラミン、アンメリド、アンメリン、およびシアヌル酸の優れた分離と分析が実現します (図 3)。スクリーニングと確認の両方を可能にするために、各化合物に対して少なくとも 2 つのマルチプルリアクションモニタリング (MRM) トランジションで検出するようにトリプル四重極 MS を設定しました。このメソッドでは、オリジナルの GC/MS 選択イオンモニタリング (SIM) メソッドに比べて感度と選択性が大幅に向上します。
正確な定量の実現
直線性を調べるために、メラミンとその 3 つの類似体の標準試料を 0.78、1.25、3.9、および 12.5 ng/mL の濃度で乳児用調合乳または大豆食品のマトリクスに添加しました。この濃度は、0.16 ~ 2.5 ppm の検出レベルに対応します。各マトリクス中の 4 つの各化合物に対して生成された検量線は、優れた直線性を示しました。[3] 定量の精度も、両方のマトリクス中の 4 つの化合物すべてについて非常に優れていました。
メラミンおよび関連化合物を分析する場合は、この FDA GC/MS メソッドの修正を使用して、スクリーニング、定量、および確認を迅速に行うことができます。また、メソッドは、0.25 ppm の感度という新たな FDA 要件を満たし、2.5 ppm までの優れた直線性を示します。4 つの各化合物に 2 つの MRM トランジションを使用すると、非常に優れた定量精度での積極的確認が可能になります。詳細については、記事全文をダウンロードしてください。
謝辞
Greg Mercer 氏 (Pacific Regional Laboratory Northwest、Food and Drug Administration) の指導および試料の支援に感謝の意を表します。
参考文献