技術部長のエド・ダブレーと、Agilent マイクロ ECD GC システム
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環境分析ラボ業界が困難な時代を迎えたことは、それはもはや秘密ではない。この数年間で米国の最も大きな環境分析ラボのいくつかがその看板を降ろした。それ以外の業者はリストラ中だ。今やこの業界のあらゆる所で聴こえるのは、ダウンサイジングで振り下ろされる斧の切り刻む音だ。市場の新しい現実 (より厳しくなる競合、より低くなる価格、より高度な期待を要求する顧客、規制の緩和による分析ニーズの減少) とそれに順応することだ。
とりわけ逆境のこの業界でその厳しい状態にも元気なひとつのラボは、Jupiter Environmental Laboratories 、フロリダのジュピター社だ。ジュピター社の技術部長、エド・ダブレー によれば、今の政治情勢は、環境活動家が環境規制を求めて活動するのを妨げている。「フロリダの開発は今広く開かれている。」と彼が言う。
業界は不況であるが、2 年前に開業したこのジュピター社は、それ以来ずっと繁盛してきた。興味深い事に、このラボは土地開発業者のグリンダ・ラッセルにより組織された。彼女は自分が販売する不動産のサンプル分析で、もっと速やかな結果報告を必要とした。起業家として、ラッセル女史が発見して驚いたのは、この業界のすべてのセグメントで、それらが彼らの顧客のニーズや顧客の納期を遵守することに、完全に無頓着な人々によって運営されていることであった。「彼らが当たり前だと思っているのは、いいですか、あなたのサンプルが、何もしないでラボにそのまま保管されていること。我々は、それを金曜日までに片づけて送り出そうとしました。」と、ダブレー が言う。
グリンダ・ラッセルの設立したジュピターラボは環境分析で顧客のニーズに応える
ラッセルはこの市場にニッチの隙間を見つけ、そしてそれに飛び込んだ。「彼女はこのような状況から利益を得るにはラボを持つことだと決定した、そのラボは有機化合物の検査を専門に扱い、最新技術を利用して間接費をコントロールするのだ。」と、 ダブレーは回想する。一流のエンジニアリング顧客のみと取り引きし、シニアケミストのみを雇用することで、ラッセルは彼女のラボが卓越したサービスと迅速なターンアラウンドを、競争優位の価格で提供できると感じた。
他社のラボからトップのケミストを引き抜いた。彼らは、貧弱で不自由な状況に疲れ、老朽化した設備にうんざりしていた。ジュピター社ラボは、顧客に 3日間のターンアラウンドを約束し、1995年に開業した。以来彼らは約束した納期を破ったことはない。
6人のケミストで、待ったなし
ジュピター社のスタッフは 6 人で全員がケミストだ。「官僚制は無しだ」と、ダブレーが説明する。「ここには階級も無い。電話を受けた人は誰でも自分で答える、たらい回しにしない。サンプルを抽出する必要があるなら、そうなっている。段取りの効率が良く、サンプルを入手したら迅速にラボに持ち込む。所要分析時間を短くしているので、我々の受け入れ能力は非常に高い。細い内径のカラムを最新の質量分析計と共に使い、同じサンプルを何度も分析しなくてもよい。サンプルが持ち込まれると、一旦保存される代わりに、分析機器にそのまま正しくセットする。機器は毎日きれいにして、全体の処理能力を高く維持している。ホールド・アップもボトルネックも無い。」
「我々は、分析しなければならないサンプルが同じ日に殺到する複数の顧客を持っている。それも同様に楽勝だ。」と、ダブレーが続ける。「我々は実際に外に出てフィールドでサンプルを集めてくる、それらをラボに持ち込んで、5 時までにデータを届けるだろう。」
ジュピター社の品質サービスは、測定が困難なサンプルや特殊な化合物にレパートリーを拡大する。それらは彼らが日常分析するメソッドと異なり、EPA に分析法が記載されていない。彼らは、多くの特注分析を実行する。それらは自動化され、ネットワークで結ばれ、もし必要ならスタッフは自宅から分析をモニターして設定を変更できる。
それぞれのケミストは、彼らの顧客が必要とする納期に間に合うよう、必要なら何でもする
「我々はまさに最高のサービスを供給する約束を守る」と、ダブレーが言う。「我々が、すべて最新の Agilent 製装置を持っているのはそのためだ。」それらの装置の中には、2台の Agilent 製 GC/MS がある。一方は揮発性化合物の分析に、もう一方は中揮発性化合物の分析に使用する。今度の新しい Agilent マイクロ ECD は、殺虫剤、除草剤、PCB類、多成分分析に使用しているが、これは喝采ものだ (横のコラム「ブレークスルーの構造」参照)。
「このマイクロ ECD は、まったく信じられないほど高感度だ。これまでこんなすごいものは見たことがない」と、ダブレーが言う。「クリフ・ロス (このラボの所長) が 1 ppb の標準試料を打ったとき、私は横で実際のカウントを見ていた。クリフが驚いた『みろよ、このピークを、信じられない、みんなでかくてシャープだ!』こんな結果は今までに例が無かった。私は標準試料調製のログブックをチェックして、希釈の誤りでないかどうか調べた。誤りは無かった。その日我々はこのラボのキャリブレーションで低濃度側の範囲をもっと下に変更した。」
Agilent マイクロ ECD は ppt (一兆分の一) レベルの化合物をルーチンで検出でき、リニアダイナミックレンジは 5×104 以上ある (リンデンの場合)。
ジェフ・ダウニングは Agilent のフィールドエンジニアだ。彼もまた明らかな理由からこの装置が好きだ。「これは本当に売るのが簡単だ」と、彼が言う。「お客様の所に行って -4 桁の直線性はいかがですか、これまで誰も得られなかった感度はいかが、汚れたサンプルにびくともしない検出器の安定性はどうですか - これで商談は決まりだ。後は近所のどこがおいしい昼食を出すか教えてもらうのだ。」
ダブレーが言うには、彼は顧客が分析の知識を持っているかどうか言い当てることができる。知識を持っている人はマイクロ ECD のクロマトグラム見るとすぐに折り返し電話を掛けてくる。彼らはいつも信じてくれない。「彼らが言うんだよ、『これが ECD だなんて私に言わないでくれ。こんなことは不可能だ』ベースラインは完全にフラットだ、ピークは左右対称だ、殺虫剤の異性体はベースラインで分離している。それは使っていて本当に楽しいし、実に頼りになるやつだ」ダブレーが続ける。「分析と分析の間で保持時間は 0.010分 足らずしか違わない。それで、同じピークはいつも正確に同じ時間に出る。日間変動のふらつきを何も心配しなくてもよい。」
ジュピター社には、きわめて僅かな濃度の化合物を測定して彼らの地所を調査している顧客がある。国の環境基準よりもはるかに低い濃度だ。研究所のアプローチをビジネスに結び付けるものとして、Agilent マイクロ ECD はラボが必要とするある種のパフォーマンスを提供する。
今日の環境市場で新しい現実に対処して、競争に勝ち残ろうとするなら、ラボが獲得しなければならないことは、実際、パフォーマンスを可能にしてくれるある種のものだ。それ以外には何もない。Jupiter Environmental Laboratories はそれを確証できる。
(1998/5月号特集記事より再掲載)