>> Access Agilent 購読ご希望の方はこちらからご登録ください | 6月号記事一覧 | 【さらに詳細】
次世代シーケンシング:Agilent 2100 バイオアナライザで
出発DNAとシーケンシングライブラリを確認
Rüdiger Salowsky
Agilent バイオアナライザ RNA および DNA ソリューション担当製品マネージャ
次世代シーケンシング (NGS) の登場は、全ゲノムシーケンシングプロジェクトのコストを大幅に削減すると同時に実験スピードを高めることで、ゲノム研究の様相を一変させました。NGS プラットフォームのスループットの向上に伴い、最高品質のデータを手にするためには、断片化した 出発 DNA や DNA シーケンシングライブラリのサイジング、定量、品質評価が必要不可欠になっています。主だった NGS プラットフォームプロバイダの全てが推奨している Agilent 2100 バイオアナライザは、NGS サンプル前処理ワークフローにおける各種サンプルの自動サイジングおよび定量の業界標準になっています。
出発 DNA と シーケンシングライブラリの品質を簡単に評価
NGS による実験を始める際には、断片化したゲノム DNA ライブラリのサイズ分布を、あるいは microRNA (miRNA)の分析を目的としてシーケンシングする際には 試料RNA中の、短鎖画分の完全性を確認しなければなりません。いずれの NGS プロトコルでも、2100 バイオアナライザで上記の確認を行ったあとは、通常は特定のシーケンシングアダプターとリンクする DNA ライブラリを作製する必要があります。アダプターライゲーション、ライブラリ抽出、精製といった手順後は、作製した DNA ライブラリのサイズ、質、量を 2100 バイオアナライザで簡単に調べることができます。使用する NGS プラットフォームに応じて、Agilent DNA 1000 キットまたは Agilent RNA 6000 Pico キットのいずれかを使用します。
図 1. 2100 バイオアナライザで得られたエレクトロフェログラムの重ね合わせ表示により、2 つの DNA ライブラリのサイズ範囲を簡単に比較できます。(画像を拡大するにはここをクリックします) |
たとえば、図 1 は、あるライブラリ (青) の平均断片長が元のライブラリ(赤)より小さくなったことを示しています。この情報を使えば、実験の初めの DNA 断片化やゲノムのターゲット領域の濃縮作業を行っている場合はそのターゲット濃縮ステップ、シーケンシングライブラリの作製作業を最適化することができます。また、エレクトロフェログラムを重ね合わせ表示すれば、プライマーダイマーや PCR におけるアーティファクトを視覚化し、シーケンシングサンプルの品質を容易に調べることが可能です。
新製品 Agilent High Sensitivity DNA キットを使えば、ライブラリ増幅時のアーティファクトの発生の回避が可能に
NGS プラットフォームの注目度が高まるのに伴い、NGS データの信用性を向上させることが、ワークフローに欠かせない要素となっています。ほとんどのNGS ワークフローでは、アダプターライゲーションした DNA 断片を濃縮し、シーケンシングライブラリのモル濃度を正確に算出するために、サンプルの前処理にあたって DNA ライブラリの増幅ステップが必要となります。しかし、このPCR 増幅ステップは、増幅のバイアスや増幅によるアーティファクトがシーケンシングライブラリに入る危険を伴います。これらがシーケンシングライブラリに入ると、生成されたシーケンシングデータにも、そうしたバイアスやアーティファクトに由来するデータが入り込むことになります。アジレントは、こうした NGS ワークフローの障害に対処するために、2100 バイオアナライザでの低濃度 DNA サンプルのサイジングと定量を可能にする High Sensitivity DNA キットを開発しました。
新しい Agilent High Sensitivity DNA キットの特長 :
最適化されたプロトコルと新開発の電気泳動ケミストリを採り入れた新しい High Sensitivity DNA キットは、数 pg/μL という極めて低い濃度域における DNA フラグメントの定量を可能にします。高い検出感度により、シーケンシングライブラリ増幅に必要な PCR サイクル回数を大幅に減らすことにより、増幅アーティファクトを低減し、シーケンシングデータの品質を高めます。
図 2. DNA ライブラリのエレクトロフェログラムは、High Sensitivity DNA キットの優れた性能を示しています。(画像を拡大するにはここをクリックします) |
感度を 30 倍向上
NGS ワークフローへの新キットの有効性を確認するために、DNA 1000 キットと High Sensitivity DNA キットを用いて、各種の DNA ライブラリを分析しました。一部のケースでは、30 倍という新キットの優れた感度により、PCR 増幅手順を行わなくても、DNA ライブラリの検出と定量が可能でした。図 2 には、両キットで分析した DNA ライブラリのエレクトロフェログラムを示しています。標準 DNA 1000 キットでは、ライブラリはほとんど検出されませんでしたが、High Sensitivity DNA キットでは、低濃度サンプルの視覚化、サイジング、定量が可能でした。
アジレントは、低濃度サンプルの分析におけるキットの有効性をテストするために、キットの開発初期段階で、NGS ユーザーによるベータテストを行いました。James Hadfield 博士が率いる英国がん研究所 (CRUK) の Core Genomics Facility は、2100 バイオアナライザにより Illumina GAII DNA ライブラリを分析するテストを数週間にわたって実施し、良好な結果を得ました。このラボでは、High Sensitivity DNA キットを使用したことで、これまでは視覚化できなかった低濃度サンプルの純度やサイズ分布を調べることができるようになりました。
2100 バイオアナライザは、NGS ワークフローにおけるDNA試料の品質確認のための高速で簡便な手法を提供します。High Sensitivity DNA キットは、これまでの DNA 1000キットによる分析より大幅に低い濃度の検出を可能にします。NGS サンプルのサイズ分布チェックおよび定量に興味のある方は、Agilent 2100 バイオアナライザを用いた DNA 分析、および High Sensitivity DNA キットの詳細をご確認ください。