GC カラムの寿命を延ばすには - Part I

Cikui Liang、Mitch Hastings、Jason Ellis
Agilent J&W GC カラムチーム

カラムは工場を出荷された後、さまざまなサンプルや分析条件で使用されています。使用するサンプルや分析条件によって、カラムの固定相の状況は左右され、その結果、カラム寿命に影響を及ぼします。したがって、カラム寿命を最大限に引き伸ばすためには、カラム固定相性能を劣化させる要因を理解し、劣化を最小限に抑える方法を知ることが重要です。

GC カラム固定相劣化の一般的な要因としては、以下が挙げられます:

  • 不揮発性および半揮発性サンプルの残留物によるカラムの汚染
  • 高温状況下での酸素によるダメージ
  • 温度上限を超えることで生じる熱によるダメージ
  • 無機塩基、無機酸、塩による化学的なダメージ

すべてのキャピラリカラムの劣化は、この 4 つが原因と考えられますが、カラム劣化のもっとも大きな原因は、注入したサンプルによる汚染です。* この記事では、そうした汚染によるダメージを最小限に抑えるためのヒントを特集しています。来月の記事では、酸素や熱、化学物質によるダメージを最小限に抑えるためのヒントを紹介します。

カラム汚染 - カラム劣化の最大の原因

すでに述べたように、注入したサンプルによる汚染は、カラム劣化の最大の要因です。こうした汚染の一般的な症状としては、ブリードの増加、ピークテーリング、活性の高い化合物のレスポンス低下などが挙げられます。

不揮発性の物質はカラムから溶出しないため、カラム内に蓄積します。その結果、カラムは残留物に覆われ、固定相の内外でサンプルと適切な相互作用ができなくなります。またこうした残留物は、活性の高い溶質と反応し、ピークテーリングやピークサイズの減少を引き起こすこともあります。

蓄積した半揮発性物質は最終的には溶出しますが、溶出するまでには、数時間、ときには数日を要します。また、ピーク形状やピークサイズの問題を引き起こすのに加えて、半揮発性の残留物は通常、ベースラインの不安定、ドリフト、ゴーストピークなど、ベースラインに関する問題の原因にもなります。

サンプル汚染を最小限に抑えるための 3 つのヒント

このヒントを活用して、カラムの寿命を延ばしましょう。

  1. 残留物の確認。 ここで紹介する簡単かつ短いテストにより、ダメージを引き起こす可能性のある残留物がサンプルに含まれているかどうかを確認してください。サンプル 20 µl 程度を顕微鏡用スライドガラスに滴下します。加熱したGC注入口またはホットプレートにスライドを置き、乾燥させます。サンプルを滴下した場所に残留物が見られる場合は、クロマトグラフィ上の問題を引き起こしたり、カラムの固定相にダメージを与えたりする可能性があります。
  2. ガードカラムの使用。 ガードカラムは、分析カラムを汚染から保護します。サンプル残留物はガードカラム内に蓄積し、分析カラムの固定相を覆うことはありません。ガードカラムは長さが 5-10 メートルほどあり、ガードカラム全体を交換する前に何度もカットできるため、この単純な予防策をとれば、コスト効率も向上します。アプリケーションによって異なりますが、ガードカラムは 1 週間から 6 か月にわたって使用できます。ベースラインやピーク形状に問題が生じたときがガードカラムのカットや交換の目安です。
  3. カラムエージング時間の制限。 カラムを長期間にわたって高温状態にさらすと、一部の残留物が不溶性物質に変化し、カラム寿命を短くすることがあります。カラムエージングについては、カラムの使用温度上限で 1~2 時間以内に制限してください。

どのようなカラムでも、汚染の激しいサンプルを注入すれば、一度で使えなくなることがあります。その一方で、何年も使いつづけられることもあります。DB-1 カラムの最長使用記録は 20 年です -- この記録は、サンプルがきわめてクリーンで、かつ分析温度が低い石油(ナフサ) 分析で得られたものです。このことは、必要な予防策をとれば、カラム寿命をのばすことができることを示しています。

酸素、熱、化学物質によるダメージを最小限に抑えるためのヒントについては、来月の記事「Part II」をご覧ください。

* 一般に、ダメージの原因となる不揮発性および半揮発性残留物を含む可能性のあるサンプルは、抽出されたサンプル(生体液や生体組織、土壌、廃棄物、地下水など) と医薬品賦形剤です。